ゲームの腕を競う「eスポーツ」の活用が島根県内の教育現場で進んでいる。体を自由に動かせない生徒が体育の授業に遊んだり、不登校や中退の事情を経験した生徒も通うフリースクールで新たな部活動に取り入れたりと形態はさまざま。上達には戦略やチームワークが重要なだけに、生徒同士が自発的に相談して交流を深めるなど前向きな変化が生じつつある。

 松江緑が丘養護学校(松江市上乃木5丁目)では2020年春、eスポーツの大会を動画で見た景山和信教諭が「これは良い教材になる」と導入を発案。校内でゲームの体験会や教員間の協議を重ねてきた。

サッカーゲームに打ち込む生徒たちと指導者の景山和信教諭(右奥)=松江市上乃木5丁目、松江緑が丘養護学校

 生徒は入院しながら通学したり車椅子で生活したりとさまざまな事情がある。共通するのは、思い切り体を動かすことが困難な点。普段の体育は散歩やボール投げなど定番の内容が多く、マンネリ気味でもあった。eスポーツの導入にはゲームの世界で仮想的にとはいえ、伸び伸びと運動を楽しんでもらい、生徒の意欲を引き出す狙いがある。

 21年9月から高等部の4人が週2回、体育でサッカーゲーム「ウイニングイレブン」をプレー。競技の歴史やルールを座学で知り、ゲームでコンピューターと対戦する「実技」で体験も深める。授業中、生徒は「ナイスパス」と声を上げて懸命に球を追う。ゲーム好きの生徒も多く、共通の話題で盛り上がることも。3年の小林浩典さん(18)は「eスポーツで同級生とより話しやすくなった」と満足げだ。

 生徒の変化は教師も実感し「自分から声を出して他の生徒と連携を取るようになった」と景山教諭。今までの体育では何度か指示しないと動かないこともあったが、自発的に授業へ打ち込む姿が見られるようになった。21年度は試験導入で、内容を精査した上で来年度の本格導入を進める。

 授業でなく、部活動として導入したのはフリースクール「こころの宝石箱」(松江市学園2丁目)だ。

 通信制高校と提携して高校卒業を認められる「通信制サポートコース」がある同校では21年10月に「eスポーツ部」を創部。宍道校舎(同市宍道町宍道)にゲーム用の高性能パソコンを置いた。1、2年の計3人が週3回、3対3で車を操作してサッカーに似た競技をする「ロケットリーグ」などの練習に明け暮れ、大会出場を目指している。

ゲームの練習に取り組むeスポーツ部員ら=松江市宍道町宍道、こころの宝石箱宍道校舎

 全日制の高校に比べグループ学習の時間を設けにくい同校にとって、体格や性別による力の差がないeスポーツには協力の精神を学ぶ教材としても期待していた。活動を始め3カ月経過する中、顧問の広田量久教諭は「今までにない表情を見せる生徒もいる」と目を見張る。

 プレー中に...