プロジェクトで奉納する刀の神前打ちを披露する月山貞利刀匠一門=2021年10月、島根県海士町海士、隠岐神社
プロジェクトで奉納する刀の神前打ちを披露する月山貞利刀匠一門=2021年10月、島根県海士町海士、隠岐神社

 後鳥羽上皇(1180~1239年)をまつる隠岐神社(海士町海士)に、全国の名工が手掛けた日本刀を奉納するプロジェクトが始まった。来島800年に合わせた事業。上皇が優れた刀工を保護した「御番鍛冶(ごばんかじ)」の令和版として4、5年がかりで現代の刀工や日本刀文化に光を当てる。愛好家はもちろん、ゲーム「刀剣乱舞」や漫画「鬼滅の刃(やいば)」で日本刀に興味を持った若者にもPRする。

 鎌倉時代の承久の乱(1221年)に敗れて中ノ島(海士町)に配流された上皇は、都にいた頃、全国の優れた刀工を「御番鍛冶」として抱え、刀工が注目される礎を築いた。自らも刀を打ったと伝わり、和歌などと合わせマルチに才能を発揮したとされる。

 プロジェクトは、隠岐神社や県内外の日本刀研究者が企画。上皇が月番制で作刀に当たらせたことにちなみ、国内トップの刀匠ら12人ほどに作刀を依頼する。2021年10月には、1作目を手掛ける月山貞利刀匠(75)=奈良県指定無形文化財保持者=が隠岐神社で神前打ちを披露した。

 1振り数百万円の事業費は、インターネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)を活用。1月12日で締め切った1作目のCFには177件、計720万円が寄せられた。

 プロジェクトでは刀匠らの作刀の記録も残し、日本刀文化や上皇への関心を誘いたい考え。隠岐神社の村尾茂樹禰宜(ねぎ)(51)は「反響の大きさに驚いている。日本刀文化の再評価に向けた機運を、後鳥羽院ゆかりの隠岐から発信したい」と話した。
      (森山郷雄)