新型車両「やくも」のイメージ図。デザインは9月をめどに決める(JR西日本米子支社提供)
新型車両「やくも」のイメージ図。デザインは9月をめどに決める(JR西日本米子支社提供)

 JR西日本米子支社が岡山-出雲市駅間を結ぶ特急やくもの新型車両を、2024年春のダイヤ改正に合わせて導入する。JR西が共同開発。車体を傾けてカーブ区間を高速で通過できる国内初の「車上型制御装置付き振り子方式」を採用し、安全性に加え、乗り心地の向上を図るなど快適性を重視した。

 車体デザイン決定後に製造に入り、24年度に全44両の投入を完了する。

 佐伯祥一支社長は16日の定例会見で「質の高い移動空間を提供し、山陰エリアの魅力発信や観光振興に寄与する列車にしたい」と述べた。

 新型は、衝突安全対策を施した273系特急形直流電車。伯備線で多いカーブに対応するため、適切なタイミングで車体を傾かせ、揺れを抑制する新方式の制御装置を取り入れる。

 座り心地を改善した座席間は現行車両の約1・07倍の1・04メートルと新幹線並みに拡大。JRグループの在来線特急の中で最大級という。

 車内に防犯カメラを設置するほか、無線LANや全席コンセント、大型貨物スペースなどを完備する。定員は4両1編成179人(現行200人)。総事業費は約160億円。

 JR西は9月をめどに車両デザインを決め、本格的な製造工程に入る。24年春のダイヤ改正に合わせて24両が先行運行する。

 初代やくも(ディーゼル車)は1972年、山陽新幹線岡山駅開業に合わせて岡山-出雲市・益田駅間で運行開始。2代目の現行車両381系は伯備線の電化に伴い82年に登場したが、製造から約40年がたち、主要部品の調達困難などに直面している。

 JR西は新型コロナウイルス禍に伴う経営悪化で見直した中期経営計画でも新型車両開発の方針を堅持した。

 (山根行雄)