昨年話題になった本に、キム・ジヘ「差別はたいてい悪意のない人がする」(尹怡景訳、大月書店)がある。書名にどきりとした人もいるだろう。実際ほとんどの人間は差別を悪いものだと考え、ゆえにまさか自分が加担しているとは思い至らない。その鈍さこそが誰かを黙らせていることに気づかないのだ。

▽対話なき愛

 遠藤周作の未発表の戯曲原稿が「新潮」3月号に掲載された。遺...