石本正さんの自筆の寄稿文などが並ぶ紹介コーナー=浜田市三隅町古市場、石正美術館
石本正さんの自筆の寄稿文などが並ぶ紹介コーナー=浜田市三隅町古市場、石正美術館
「二人の踊子」(1972年)=石正美術館所蔵
「二人の踊子」(1972年)=石正美術館所蔵
石本正さんの自筆の寄稿文などが並ぶ紹介コーナー=浜田市三隅町古市場、石正美術館
「二人の踊子」(1972年)=石正美術館所蔵

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 浜田市出身の日本画家、故・石本正さんの生誕100年を記念し、石正美術館(浜田市三隅町古市場)で開催中の回顧展で、文豪・川端康成(1899~1972年)との親交を紹介するコーナーが目を引く。裸婦画や寄稿文から、美術と文学の垣根を越え21歳年長の川端を尊敬し、代表作「伊豆の踊子」「雪国」の深みのある女性像に影響を受けたことがうかがえる。

 川端が新潮芸術振興会の日本芸術大賞の選考委員を務め、接点が生じた。1971年の審査で裸婦や舞妓(まいこ)を優美に描く石本さんを強く推し、他の委員と激論の末、大賞に押し上げた。その縁で京都の石本さんのアトリエを訪れるなど交流が始まり、川端の死の直前まで続いた。

 画業全盛期だった石本さんはその後、全ての賞を辞退するようになり画壇と距離を置いた。亡くなる2015年まで制作に没頭した。

 「川端との出会いで考え方が変わったのではないか」というのが、石正美術館の横山由美子主任学芸員の見立てだ。

 コーナーには、伊豆の踊子の豪華本用に挿絵を依頼されて描いた裸婦画「二人の踊子」(1972年)、自筆の寄稿文などが並ぶ。

 寄稿文では、自らの作品について「川端文学の持つ夢幻的なものへのあこがれが、作品を作らせたと云(い)えます」と述懐。伊豆の踊子、雪国の舞台を実際に歩いたことも明かし、愛や悲しみの苦悩を自覚しないまま必死に生き続ける女性たちを川端は見事に描いている、とたたえる。

 豪華本は川端の死もあってか出版されず、二人の踊子は個展で発表。「伊豆の踊子と雪国に登場する女性像に印象が重なる」と話題になった。裸体美に加え、憂いを帯び想像をかき立てる表情が特徴的だ。

 横山主任学芸員は「愛にひたむきに生きる女性の姿や哀愁といった川端作品の魅力が目標となり、絵に生かされたと思う」と話す。

 回顧展は6月12日まで。1936~2015年に描かれた80点が並ぶ。当日券は一般800円、高校・大学生300円、小・中学生200円。月曜休館(祝日の場合は開館)。