人気キックボクサー・那須川天心さん所属の立ち技格闘技「RISE(ライズ)」で、脱サラして昨年1月にプロデビューした出雲高校出身の藤井重綺さん(26)が注目株になっている。ボクシングで培ったパンチを武器に新人王を獲得し、2月23日の試合も見事勝利。地元・出雲で格闘技ジムを開く夢を描き、トップ選手が集うリングで技を磨き続ける。 (白築昂)
「格闘技の聖地」として名高い後楽園ホールで23日にあった興行。大勢の観客が詰めかけ、会場が熱気を帯びる中、藤井さんがスーパーフェザー級(60キロ)の試合(3分×3ラウンド)に臨んだ。ランク上位の選手を相手に序盤から左右のパンチを繰り出し、1ラウンドで早くもダウンを奪うと、勢いそのままに2、3ラウンドも主導権を渡さず圧倒。3-0で判定勝ちした。
デビュー後の戦績は6戦5勝1敗(1KO)で、着々と勝ち星を積み上げる。高校、大学でボクシング部に所属し、全国大会や国体に出場する中で磨きをかけたパンチのスピードと威力に自信を持つ。
さらにこの1年間はキックの技術や体の使い方を本格的に学んだ。この日の試合でも要所で積極的に繰り出したが「キックで足がしびれ、フットワークが重くなってしまった。もっと練習を積む」と反省点を口にしながら次を見据えた。
高校時代は2年連続でインターハイに出場し、中央大に進学後はボクシング日本ライト級3位の三代大訓選手(松江市出身)らと練習に励んだ。
ただ、1年時に左目を負傷。卒業後、競技を離れて大手住宅メーカーの営業職に就いたものの、心の中は「いつも格闘技〝ロス〟状態だった」という。
数カ月間のサラリーマン生活を経て、現在所属する都内の格闘技ジム・トイカツ道場の体験会への参加をきっかけにインストラクターとして転職。練習と出稽古を続けながら都内2店舗の店長を務めながらRISEの舞台に立つ。
プロ選手としてのキャリアは30歳を一つの区切りにするつもりで、今は受講生のスケジュール管理や物販といった運営ノウハウを同時に学び、将来のジム創設に生かす考えだ。
競技に打ち込む中で常に感じるのは県内の競技人口の少なさ。「競技人口が増えないとレベルも上がらない。いろんな世代の人がボクシングや格闘技に触れるきっかけをつくっていきたい」と先を見据える。