元の場所に戻った地蔵に交通安全を祈願する川崎和子さん=島根県川本町川本
元の場所に戻った地蔵に交通安全を祈願する川崎和子さん=島根県川本町川本

 工事のため別の場所に移設されていた交通安全祈願の地蔵が、1年ぶりに川本町川本の県道仁摩邑南線沿いに戻った。母の代から数えて67年間祈願を続ける近くの川崎和子さん(80)は「戻ってきて感無量。これからも家族や地域のみなさんを事故から守ってください」と毎朝の新聞配達の道すがら、手を合わせる。

 地蔵は1954年、現在の川本東大橋南詰めに建立された。当時この付近は未舗装で急カーブが多く、高さ20メートルの崖下に転落すれば江の川に流される危険な場所だった。頻発する交通事故に胸を痛めた町民有志が浄財を出し、災難よけの願いを込めた。近くに住む母のキクヨさんは建立直後から毎日祈願した。

 和子さんはキクヨさんが亡くなった94年に祈願を引き継いだ。毎朝の新聞配達の途中、地蔵の前に自転車を止め、ろうそくに火をともし祈る。体を拭き周囲の草取りをして手入れし、年1回の供養も欠かさない。

 2020年3月から始まった落石対策工事に伴い、同町湯谷の長江寺に一時移設された。その間も和子さんは地蔵があった場所で手を合わせ続けた。

 工事が終わり地蔵は3月下旬に戻った。これまでさしていた鉄製のかさは老朽化したため、工事を請け負った同町南佐木の建設会社オーサンがお堂を新設した。和子さんは交通安全に加え、今は新型コロナウイルスの収束も願うといい「平穏に暮らせる毎日に感謝しながら祈り続けたい」と話した。 (佐伯学)