松江藩お抱え絵師の陶山勝寂(しょうじゃく)が晩年に描いた「十六羅漢像」の掛け軸が、松江市奥谷町の万寿寺で10数年ぶりに公開されている。江戸末期から明治初期の動乱期に描かれたとみられ、専門家も制作経緯などに興味を示している。4月末まで本堂で展示される。
(政経部・今井菜月)
十六羅漢は、各地で仏法を守り伝えたとされる釈迦の高位弟子16人。国内では11世紀後半から仏教絵画のモチーフのひとつとして各地で描かれた。
勝寂は、松江松平藩第9代藩主の松平斉貴(なりたけ)と10代藩主の定安から信頼された絵師の1人。精緻な画風から現代でも評価され、人気が高い。
公開した、16幅の掛け軸には「おびんずる様」として知られる「賓度羅跋■(口ヘンに羅)惰闍(びんどらばらだじゃ)」など羅漢が1人ずつ、しなやかな筆致で描写されている。勝寂をよく知る出雲文化伝承館の藤原隆副館長も目にしたことがなく「真摯(しんし)に描かれた勝寂の優品だ」と評価した。
一方、松江歴史館の西島太郎学芸員は作品が明治3年(1870年)に寺に寄進されたことに着目。「明治維新直後の世の中が大きく揺れ動いた時期で、どんな理由で描いたのか興味深い。羅漢の功徳を求め制作を依頼されたのかもしれない」と分析した。
寺に寄進した檀家の法事で、蔵出ししたところ親族がいたく感嘆したことなどから一般公開に踏み切った。古賀泰道住職(47)は「どなたでも自由に拝観してほしい」と話した。












