安来市の飯梨川河口。撮影条件がそろうと、南米ボリビアのウユニ塩湖のような写真が撮れるという。(安来市オープンデータサイト)
安来市の飯梨川河口。撮影条件がそろうと、南米ボリビアのウユニ塩湖のような写真が撮れるという。(安来市オープンデータサイト)

 長引くコロナ禍で、海外を訪れることが難しくなった。記者は外国語大学に通った学生時代、アルバイトでこつこつ貯めたお金で海外を訪れることが何よりの楽しみだった。きょうは4月1日、エープリルフール。うそでもいいから、海外旅行気分を味わいたい。地元で海外っぽい写真の撮影に挑戦してみた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 訪れたのは、安来市の飯梨川河口。南米ボリビアの塩原・ウユニ塩湖のような写真を撮影でき、「安来のウユニ塩湖」と注目される撮影スポットという。

 本場ボリビアのウユニ塩湖は、海水が干上がってできた塩原で、雨期になると辺り一面に水たまりが広がり、水面に空や風景がくっきりと映り込む。水面が空をきれいに映し出すことや、標高約3700メートルの高地にあることから「天空の鏡」と呼ばれている。空と地面の境目が分からない、別世界のような光景が人気の観光スポットだ。

ボリビアのウユニ塩湖(共同)

 飯梨川河口は約30メートルにわたって砂が堆積し、河口一帯に浅瀬が広がっている。水深20センチ前後の河口の水面に空や雲の風景が映り込むことで、まるでウユニ塩湖にいるかのような写真を撮ることができるという。松江市中心部から車で30分ほどの場所で、ウユニ塩湖のような光景が見られるとは夢みたい。3月24日、期待に胸を膨らませながら、飯梨川河口に向かった。

 ワクワクしながら河口に到着したが、たちまち不安に襲われた。天気はいいが、風が強い。水面は激しく波立ち、空どころか人の影も映りにくい。場所やアングルを変えながら撮影してみたが、水面に映るのは波、波、波。空や雲がくっきりと映りこんだ、ウユニ塩湖風の写真にはならなかった。夕方で太陽が沈みかけていたため、水面に人の影を映すのも難しかった。残念な写真と無念さを抱え、帰路についた。さすがに自然は甘くない。

 翌日もチャンスを狙ったが、天気がさえない。その翌日の27日に至っては風速30メートルを超す暴風が山陰両県に吹き荒れた。そして迎えた28日、嵐が過ぎ外は快晴。再チャレンジを決めた。前回よりも空が青く、太陽の位置が高い。青空や人の影はきちんと水面に映り込みそうだ。少し風があるが、前回ほどの強風ではなく、ひと安心。今日こそはと撮影に挑んだ。

 アングルやポーズを調整しながら写真を撮る。空と水面がバランス良く写るように、また、人物の影が水面に映るように、位置を変えながら撮影した。

 陸から離れた部分は風で波が立っていたが、陸に近い浅瀬の部分は波が穏やか。太陽の光が十分に当たっていたため、手前の水面には空の青さが写り込む、鏡映しの光景をやや再現できた。水面全体に波がない状態であれば、より広い範囲にわたって風景が写り込む水面を撮影できそう。

 何枚か撮影した中から選んだ一番それっぽい1枚は…。

空がくっきりと映り込んだ水面は撮影できなかったが、開放感のあるリゾート風の写真が撮れた。

 本物とそっくりの写真は撮れなかったが、穏やかな天気の中、開放感のあるリゾート風の写真にはなったのではないか。同じ場所でも、天候によってグッと表情が変わるのだと驚いた。撮れた写真を眺めると、海外旅行の非日常の感覚が少しよみがえってきた。

中央の白い丸を動かすと、画像を見比べることができます。


▷「安来のウユニ塩湖」撮影条件は
 安来市観光協会によると、飯梨川河口でウユニ塩湖のような写真を撮るには、無風状態と晴天が条件という。水面に、くっきりと空が映るためには、風がなく波がない状態が必要。うまく条件がそろうと、天地を逆転させても違和感のない別世界のような光景を撮影できるという。安来市から写真を提供してもらった。うーん、美しい。地元で撮影されたとは想像できないだろう。さまざまな条件がそろった「奇跡の一枚」を撮る難しさ、面白さを感じた。

撮影条件がそろった日の「安来のウユニ塩湖」。青空と白い雲が、水面に美しく映り込んでいる。(安来市オープンデータサイト)


▷他の海外風スポットも 
 記者の挑戦に影響されたのか、コロナ禍で暇をもてあましていたのか、Sデジ編集部の他の部員も海外風の写真を撮れるスポットを探し、渾身(こんしん)の1枚を撮影してきた。

「自由の女神像」を模したオブジェ=松江市東出雲町、フジキコーポレーション本社駐車場

 これはニューヨーク…。いえ、松江市東出雲町のギフト用品販売フジキコーポレーション本社の駐車場。米国・ニューヨーク市にある「自由の女神像」を模したオブジェがそびえている。高さ約6メートルの自由の女神像は、フジキコーポレーションが1989年に西川津店のオープン記念で設置し、2020年に現在の場所へ移転設置した。撮影時に角度を工夫すると、まるでアメリカ旅行のワンシーンのような写真を撮ることができる。

米国にある自由の女神像(ジェトロ松江提供)

 実は、足元に「子どもたちを見守るフジキの交通安全女神」と書かれていて、現在は登下校する児童たちを見守っている。カメラの角度が少しずれると後ろの壁や文字が映ってしまうので、撮影の際はご注意を。

足元には「子どもたちを見守るフジキの交通安全女神」の文字。登下校で近くを通る子どもたちを見守っている。


▽出雲にアマルフィ?
 イタリア・カンパーニア州の人気観光地、アマルフィ海岸は海岸沿いの斜面に階段状に建つ家々の風景が美しい。アカアマダイの水揚げで有名な小伊津港のある出雲市小伊津町。日本海に面した斜面に沿うように民家がびっしりと並ぶ。家の形は違いこそすれ、まさに…。

イタリアのアマルフィ海岸(イタリア政府観光局オープンライブラリー、ⓒSimone Antonazzo,Praiano,Amalfio Coast

出雲市小伊津町での一枚。海沿いの斜面に家々が並んでいる光景が、アマルフィ海岸に良く似ている。

▽雲南にはアヤソフィア?
 公共建築物にも「海外っぽい」建物がある。雲南市加茂町宇治の多目的ホール「ラメール」は異国情緒を感じる独特な形状の建物。外から見るだけで、異世界にいるかのような気分になる。丸、四角、三角と、さまざまな形が入り交じった不思議な雰囲気の外観は、トルコ・イスタンブールにある世界遺産のアヤソフィアのようだ。下からあおるように撮影すると、アヤソフィアの荘厳な雰囲気を演出できそう。

独特な形状の多目的ホール「ラメール」=雲南市加茂町宇治


トルコのアヤソフィア(共同)

 見慣れた風景も、ちょっと撮影にこだわってみると楽しいフォトスポットに変わることを実感した。自由に海外旅行ができる日はまだ遠そうだが、地元の「海外旅行風スポット」を巡りながら想像を膨らませるのも楽しそう。


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                               Sデジ編集部