読者の皆さんから、考えたい身近なテーマについてコメントを募り、山陰中央新報とSデジに掲載する「さんコメ!」。たくさんの投稿をありがとうございました。紙面には一部しか載せていませんが、Sデジでは全てのコメントを読むことができます! 記者の雑感もありますので、そちらもお楽しみください(カッコ内はペンネーム。内容は一部要約・編集しています)。
家族社会学を専門とする島根大法文学部教授の片岡佳美さん(51)に聞いた。
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大多数は「元気?」と聞く感覚で、相手にさほど関心があるわけではないのだろう。コミュニケーションの取っかかりに過ぎない何げない言葉が、相手を傷つけている事実に気が付かないといけない。
生き方、家族の在り方は多様化していることを頭では分かっているはずでも、こうした一言に、自らがとらわれてしまっている。多様化が体に染みついていないことの表れだろう。そこからいかに解放されるかが大切だ。
晩婚化・少子化の時代において、それでも「家族」という型から抜け出せていない。特に地方は顔が見える付き合いが多いために、その傾向は強いかもしれない。家族と結び付けて人生を考えてしまうことも多い。
「子どもはいない」と言われた場合、「あら残念ね」「産んだ方がいいよ」などと価値観を押しつけるのではなく、その人の生き方として尊重し、受け入れる言葉が自然に出てくるだろうか。個人をリスペクト(尊敬)するコミュニケーションのスキルが身に付いているかが問われる。
質問に傷つくのは、受け手も「子どもはいないといけない」「子どもがいたら幸せ」という無意識の枠にはまっていることもあるかもしれない。幸せに生きる条件は「家族」以外にもある。どんな立場にあろうと、その人の生き方が尊重されなければならない。
<子ども(孫)いる?って聞くこと、聞かれること>
▽不妊治療している人がいるから自分は聞かない。
▽ここ数年、この質問を受けることがとてもつらかった。結婚当初、不妊治療で授かって、でもすぐ流産した。子どもがいないことが、夫婦として、家族として足りていないような気持ちだった。子孫が続いていくことは、生き物として、本能的な願い。ただ、この質問について数年悩んだ者の一人として、悩む仲間のような誰かに伝えたい。子どもがいても、いなくても、あなた自身の価値がないことはないですよ!
▽50代子どもなし女性。子どもの有無や既婚か未婚を話題にする会話には入らない。自分自身が不妊治療を経て離婚、再婚したので、土足で踏み込む話ではない。ただ、私たちより年配の方々に「かわいそう」って言われるのは勘弁してほしい。若い方のほうが分かっていて話題にしない。
▽私の場合は、よく子どもさんは何歳? と聞かれることが多いが…。聞かれる側としては自分の年齢が分かってしまうので(笑)少し恥ずかしいかな。(さやさや)
▽特に抵抗ない。世間話のひとつ。相手も深く考えていないと思う。自分も会話に困ると、何の気なしに聞いている気がする。自分が話したくない話題は誰にでもある。うまくかわすことを身に付けるのもひとつの手。
▽結婚して7年間、子どもができなかった。人によって価値観の差が激しい分野。子どもがいまいが、できようができまいが、それもあり、それも個性、と誰もがそんなこと気にしない社会になればよいな、と思う。(よしこ)
▽すごくプレッシャーとウザさがある。純粋に欲しいと思う気持ちをうせさせた、新婚当初を思い出した。今となっては、つい聞いてしまいがちだが、聞き方に十分な配慮の必要がある。
▽事実を伝えるだけなので、特に何も思わない。本当に何も思わない。
▽自分の経験から、子どもの話はあまり出さないし、話を膨らませたくないという思いがある。子どもや孫の話がすぐ出てくる人は、順風満帆なのだなと思ってしまう。(のっこりん)
▽自身はさておき、親も「お孫さんは?」と聞かれているんだろうなぁ。そっちの方が複雑な心境になる。(よめ子)
▽相手と距離を縮めたいがゆえの言葉だと思うし、こうした言葉に出合うのは仕方ないけど「子育てしてこそ一人前」「早く子どもをつくった方がいいよ」などと続けられるとつらい。人によってはデリケートな話題で、傷つく人もいるんだと知っておくことが大切で、自分の経験や考えを押しつけ、上から目線に聞こえることを言ったりするのは控えた方がいいと思う。(金田一耕助の母)
▽自分が独身の頃は、新婚さんにはあいさつのように聞いていた。でも自身が結婚し、なかなか子宝に恵まれなかった時、「お子さんはまだ?」と聞かれるのが苦痛で苦痛で。それからは聞かなくなった。聞くことに誰も悪気なんてない。でも聞かれる側にはさまざまな事情があり、聞かれたくない場合もある。自分が経験しなかったら、今もその気持ちは分からなかったと思う。
<コロナ禍で時間の使い方は変わった?>
▽大きく変化ない。夫が在宅勤務になって一緒に過ごす時間が増えたぐらい。
▽在宅勤務で、通勤時間を家事や育児に充てられるようになった。心にも余裕が生まれ、もう昔の生活には戻れない。ミュージカル観賞が趣味。コロナ禍をきっかけにライブ配信が増え、遠くの劇場の配信も家で見ることができてうれしい。
コロナで時間の使い方はかなり変わった。人とよりも自然と関わる時間が増えた。農作業を始めたこともあり、ソーシャルディスタンスはバッチリ。(ふじこちゃん)
▽おうち時間が必然的に増えた。それにより、自分に向き合う時間ができて、息子と一緒にいる時間ができて、今までと違う幸せの形に気づくことができて、それはそれで本当によい時間だと思う。むしろ、コロナに感謝だ。
▽コロナ前と変わらない生活をあえて心がけている。会いたい人には会いに行く。感染対策を重視するあまり、マスクを外すのが恥ずかしい、変だ、などという風潮に流されたくない。
▽すごく変わった。夫婦で在宅勤務ができて2人で過ごす時間が増えた。コロナ前より時間に余裕ができた。ゆとりをもって家事やお茶休憩もできる。散歩に行くことが増えた。コロナ禍だったから不妊治療も仕事を辞めずにできた。大変だけど助かったこともあった。(のんびより)
▽仕事上、他県の業者と商談することが多い。乗り物は鉄道は特急、バスは乗らずにタクシーを使っている。お金が多めにかかるが、予防代だと思ってがんばっている。(ドルチェ)
次回のテーマは、読者からリクエストのあった「マスク生活、どう思う?」です。マナーとして着用が求められ、息苦しい生活が2年に及びます。コメントはツイッターとLINEで募ります。ツイッターは「#さんコメ」をつけてつぶやいてください。5月中旬に特集を組みます。お楽しみに!
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かたおか・よしみ 松江市を中心に、離別・死別・未婚のシングル女性の支援活動をする団体「るりっく」代表を務める。