山陰中央新報はきょう、創刊140周年の節目を迎えました。長い歴史を積み重ねてこられたのは、読者の皆さんの支えがあってこそで、感謝申し上げます。

 この間、国政や地方政治の状況、経済・産業分野やエネルギー政策、さらにスポーツや文化、地域活動の報道を通して、課題の指摘や提言を続けてきました。

 今後もITの進歩と脱炭素を背景とした新時代に、地域とともに着実な発展を目指したいと願っています。

 前身の「山陰新聞」が創刊された1882(明治15)年の島根県の人口は約67万人でした。今年4月1日現在の推計人口は当時と変わらない約66万人ですが、ピーク時の1955(昭和30)年は93万人近くに達していました。

 それが64年の東京五輪や東海道新幹線開業に始まる高度経済成長で東京などへの人口集中が進み、山陰など地方は衰退。地域間格差が拡大し、その流れは現在も止まりません。

 スマホの普及で画面情報の個人化と狭小な層化が進み、社会の一部で分断をもたらしました。持てる者と持たない者の格差が国同士、地域、個々で広がっています。

 4月に公示された官報によると島根県は19市町村全て、鳥取県は19市町村のうち15市町が、過疎自治体になっています。

 その一方、山陰でも全国から注目される地方創生の動きが出ています。

 「ないものはない」をキャッチコピーに掲げる島根県海士町は、離島のハンディを逆に売り込み、都会地から児童生徒とその家族を呼び込む「島留学」を成功させています。

 中山間地域の同県邑南町は「A級グルメ」をテーマに、食と農を生かしたまちづくりの取り組みを展開。町営で地産地消の飲食店をオープンさせたほか、食材の栽培から調理まで手掛ける「耕すシェフ」制度をつくり、交流人口を増やしています。

 こうした反転攻勢に共通するのは、危機意識と地方にこそ日本のあるべき姿、未来があるとの自負でしょう。

 地場産業が縮小し地域が衰退していく中で、この町が生き残るにはどうすればいいのかを真剣に考えて知恵を集め、改善策を見いだしたのです。

 また先日は、鳥取大医学部生命科学科の香月康宏准教授らの共同研究グループが、新型コロナウイルス感染症の治療薬など、抗体医薬品の開発につながる「完全ヒト抗体産生マウス」の作製に、国内外で初めて成功したというニュースが、本紙を飾りました。

 山陰からでも日本を、そして世界を変えられるのです。半面、今年はコロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻で惨禍が世界史に刻まれました。

 超大国の指導者が「民間人を殺していない」と真っ赤な嘘(うそ)をつく-残虐な行為が許されないというだけでなく、同時代を生きる人間として恥ずかしく思います。

 世界は自由・民主主義と独裁・全体主義が、相克する時代に投げ込まれています。これまで考えもしなかった事態に直面することになりました。

 本紙は140周年を機に、これからの歴史を開く統一テーマとして「未来をつくる 1(one)4(for)0(all)」を掲げました。one for all=1人は全員のために=の精神で分断を克服し、明るい未来を次世代に引き継ぐという決意を込めています。

 本紙は昨年、山陰中央新報デジタル「Sデジ」を始めました。これからも紙面とデジタルを通じて、山陰の未来をつくるニュースと情報を発信し続けます。