東京都を拠点にパントマイムなど肉体芸を全国で上演してきたストリートパフォーマーのジロー今村さん(45)が今春、松江市に単身移住した。20年前に松江京店商店街で芸を披露したのを機に松江に呼ばれるようになり、新型コロナウイルスの感染拡大で活動が制限される中で「恩返しがしたい」と決断。パフォーマーが普通に歩き、にぎわう町を目指し、地域おこし協力隊員として市内を駆け回る。
札幌市出身。パフォーマンスを始めるきっかけは日本福祉大(愛知県)の学生だったときで、障害児教育で言葉を使わずに身体表現だけで楽しませる面白さに引かれ、卒業後は東京のパントマイムの研究所で芸を磨いた。
退所後は、テレビのバラエティー番組「銭形金太郎」の若手芸人企画で得た10万円を手に、2002年末に47都道府県行脚を開始。都内でアルバイトしながら約1年間で全国を回り、躍動的な即興ダンスや猿の動きをまねたパントマイム、ピラミッド状に積んだイスの頂上での逆立ちなどを披露し、観客の「投げ銭」で生計を立てた。
松江には全国行脚の最中だった03年5月に初訪問。カラコロ広場のイベントで、松江京店商店街の関係者に直談判してステージに立った。それ以来、年4回以上は訪れ、04年には同広場で妻との結婚式を挙げ、19年には市から松江観光大使の委嘱を受けた。
東日本大震災の被災地・岩手県陸前高田市への移住を経て、再び東京で生活する中で新型コロナが発生。全国を旅する巡業スタイルが通用しなくなり「応援してくれる松江にパフォーマーとしてしっかり地盤をつくり、盛り上げたい」と、妻と小学生から高校生までの子ども3人を都内に残して移住を決めた。
地域おこし協力隊員の任期は3年間。平日は地域の実情や魅力を知るために各所を巡り、休日はイベントで芸を披露し、来場者の笑顔を広げる。
ジローさんは「まずは露出を増やし、面白いやつがいると知ってほしい」と強調。将来的には松江の魅力を発信して観光客を呼び込むとともに、自身の人脈を生かしてパフォーマーを集結させる思いを持ち「松江とのつなぎ役になりたい」と笑顔を見せる。
(片山大輔)