シニアカーに乗ってリハビリを行う安達和幸さん(手前)と岩崎大輔さん=米子市上後藤3丁目、養和病院
シニアカーに乗ってリハビリを行う安達和幸さん(手前)と岩崎大輔さん=米子市上後藤3丁目、養和病院

 けがや病気で脳に損傷を負う高次脳機能障害がある患者が、ハンドル付き電動車椅子「シニアカー」を活用したリハビリで、自動車の運転ができるまでに回復している。3年前から、従来のリハビリにシニアカーを取り入れている米子市内の病院では、昨年度に利用者の7割以上が運転の適性検査に合格するなど、一定の成果を上げている。 (坂本彩子)

 シニアカーを使ったリハビリメニューを提供している養和病院(米子市上後藤3丁目)では、患者が運転免許が不要なシニアカーで屋内を走り、運転や安全確認の技術を少しずつ養う。

 2014年の道交法改正で、てんかんなど特定の病気の人が免許を取得、更新するには、適性検査合格が必要になった。高次脳機能障害の患者も症状によっては同様に合格が必要だ。

 同市内に住んでいる安達和幸さん(37)もその一人。17年に脳卒中を発症し、左半身まひと左側の空間を認知できない「左半側空間無視」の後遺症が現れた。自動車学校で講習を受けた結果、左側の確認不足とS字カーブで脱輪する車体感覚のずれが見られ「運転は難しい」とされた。

 その後、同病院のリハビリを知り、19年5月から月1回通った。

 障害物をよけながらシニアカーを操作し、左右確認の強化やハンドル操作の上達を図った。成果が見えず諦めかけた時もあった。だが職員から「できると思っているからリハビリをしているんだよ」と励まされて踏ん張った。

 1年後、適性検査をクリア。今春から作業所にマイカーで通い、ウェブデザインを学んでいる。安達さんは「目標を持って行動して良かった」と振り返る。

 同病院では20年度、約40人がリハビリを利用し、30人が検査に合格した。シニアカーを使わずに合格した患者も含まれるが、新たな取り組みが底上げにつながっている。リハビリを担当した作業療法士の岩崎大輔さん(40)は「病気などで後遺症があっても、諦めずに相談してほしい」と話した。