試合後に部員と記念写真を撮る川上瑞希さん(前列左から2人目)=出雲市大社町北荒木、島根県立浜山公園野球場
試合後に部員と記念写真を撮る川上瑞希さん(前列左から2人目)=出雲市大社町北荒木、島根県立浜山公園野球場
全力投球で打者をねじ伏せる川上瑞希さん=出雲市大社町北荒木、島根県立浜山公園野球場
全力投球で打者をねじ伏せる川上瑞希さん=出雲市大社町北荒木、島根県立浜山公園野球場
試合後に部員と記念写真を撮る川上瑞希さん(前列左から2人目)=出雲市大社町北荒木、島根県立浜山公園野球場
全力投球で打者をねじ伏せる川上瑞希さん=出雲市大社町北荒木、島根県立浜山公園野球場

 甲子園を目指す仲間と共に白球を追った女子高生球児が15日夜、一足早い引退試合に臨んだ。出雲北陵高校の3年生野球部員、川上瑞希さん(17)。開幕まで1カ月を切った全国高校野球選手権島根大会は女子選手に出場資格がないため、チームが用意してくれた晴れ舞台で投打に力いっぱいプレーし、悔いなく笑顔で終えた。 (藤原康平)

 県立浜山公園野球場(島根県出雲市大社町北荒木)で同じ出雲市内の出雲工業高と対戦した引退試合。川上さんは1番左翼で先発し、4打数無安打だったが、直球に振り負けなかった。最終回はマウンドにも上がり、思い切り投げ込んだ。

 野球を始めたのは小学3年だった。一つ上の女子に誘われ、地元の大社野球スポーツ少年団に入団。チームが一つにならないと勝てない魅力にはまり、大社中学校でも続けた。日本高校野球連盟主催の公式戦に女子選手は出場できないと知った上で、五つ上の兄と同じ高校で「甲子園」という同じ夢を追う道を選んだ。

 体験入部でランニングすらついていけず体力差を痛感。それでも、弱音は吐かなかった。体を鍛え上げる冬場のサーキットトレーニングも、遅くまで続く夏の大会前の追い込み練習も乗り越えた。今春、同じ野球部に入った弟と共に、帰宅後は重さ1キロのトレーニングバットでバドミントンのシャトル打ちを続けた。

 3年間で「やめたい」と思ったことは一度もなかった。野球が好きだったし、いつも家族や友人、部員たちの支えがあった。

 周囲にも刺激を与えた。門脇圭人主将(17)は「負けたらいけないという気持ちが持てた」と振り返り、頑張りをたたえた。

 最後の試合のマウンドでは、投球練習中、守備についた仲間たちが声高らかに歌い始めた。曲はゆずの「栄光の架橋」。歩みを振り返り、気持ちを奮い立たせる歌詞だ。「気持ちが入った」という投球は、100キロ台の直球、カーブを使い、1奪三振を含む三者凡退。3-7で敗れたが、すがすがしい気持ちだった。

 試合後、部員たちに囲まれて笑顔で記念写真に納まった。7月13日開幕の島根大会はスコアラーとしてベンチに入る予定。「これからはみんなをサポートする。みんなにもいい思いをして終わってほしい」。全力で支え、最後にもう一度笑うつもりだ。