感染者の過去最多が続発し、会見で感染傾向について説明する島根県感染症対策室の田原研司室長
感染者の過去最多が続発し、会見で感染傾向について説明する島根県感染症対策室の田原研司室長

 山陰両県で新型コロナウイルスの感染者数が再び増加し始めた。6月以降の感染者数は両県ともに50人を下回る日が多かったが、20日以降、再び増え始め、島根では30日に過去最高の374人の感染が確認された。再び第6波のような深刻な事態になる可能性があるのか、両県の担当者や医療従事者に見通しを聞いた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 

 ▼感染者数3桁から一時期、1桁に

 第6波が全国を襲った2021年12月~2022年5月は山陰両県でこれまでにない数の感染者が確認された。島根県は4月に4358人、鳥取県は2月に3122人でともに過去最多の感染者数になった。

今年の山陰両県の毎月の感染者を表したグラフ。月合計で見ると、6月よりも第6波の時(1~5月)の方が多い

 都市部では感染が減少傾向にあるとして3月、飲食店への時短要請をする「まん延防止等重点措置」が約2カ月半ぶりに全国で解除されたが、山陰では感染者数の高止まりが続いた。特に島根県が多く、島根県感染症対策室によると4月の感染者数の一日平均は145人。大型連休(4月29日~5月8日)の期間には一日平均103人に上った。鳥取県で最も多かったのは2月で一日平均は112人、4月の一日平均は99人だった。

 両県とも5月までは感染者100人を超える日が複数あったが6月以降、減少を始め、島根の12日の感染者数は1月4日以来の1桁(6人)になった。鳥取県の6月の感染者数は月中旬ごろまで20~30人程度の低水準を維持した。

 感染者減少の要因について、島根県感染症対策室によると、第6波で多かった18歳以下の感染を部活動での感染対策で抑え込んだこと、多湿により空気中のウイルスの活動が弱まったことが推測できるという。

 

 ▼連日の3桁に逆戻り

 しかし、6月中旬から両県で再び感染拡大の兆候が見え始めた。

 1桁台が出た島根県では23日、5月21日以来の3桁となる128人を確認した。6月に入ってから10~40人程度が続いていたが、16日以降は50人以上が連続し、23日以降は3桁の感染が続くようになっている。鳥取県では22日、15日ぶりに感染者が50人を超えた(62人)。

 島根県の感染は主に出雲市が中心。県感染症対策室によると、27日時点の1週間の感染者数(人口10万人当たり)は168・2人で、地域別では出雲市が352・3人、安来市208・1人、松江市135・7人となった。6月17~29日に起きたクラスターは18件中5件が出雲市で、このうち市の事業所で起きたクラスター関連の感染者は358人に上る(27日時点)という。

記者会見でクラスターの発生状況や夏場の感染対策について説明する田原研司室長

 島根県の丸山達也知事は27日以降、出雲市内の飲食店利用人数を最大4人、利用時間を最大2時間とするよう県民に要請した。県感染症対策室の田原研司室長は「感染拡大の懸念が高まっているが、現状は基本的に施設内でのクラスターが主だと推測する。感染を今の段階で封じ込めるため、県民の皆さんにあらためて換気の徹底や3密の回避をお願いしたい。県としても保健所へ職員を派遣し、態勢を増強することで備えたい」と話した。感染者が増加した現状を受け、無症状者向けの無料検査は7月31日まで延長した。

 鳥取県の感染者数は島根県と比べると低いが、6月22日以降、連日50人前後が感染し、6月27日に発生した鳥取県西部県税事務所のクラスターでは職員14人の感染が確認された。29日には5月24日(126人)以来の3桁となる104人の感染が確認され、拡大の懸念が高まる。県はオミクロン株の新系統「BA.4」や「BA.5」の疑いがある感染者を確認したため、6月28日から7月末までを「感染防御強化月間」とした。会合での感染防止対策の徹底、エアコン使用時の定期的な換気をあらためて要請する。

第6波到来時、鳥取県内の感染状況について説明する平井伸治知事(資料)

 平井伸治知事は28日の記者会見で、県として保健所の応援体制の強化や県職員の感染対策の強化、徹底といった新たな対策を講じる方針を示し「変異株はかなり感染力が強いと考えた方がいい。県民の皆さんには(現在が)次の波の始まりと捉えてもらい、いま一度対策を強化するようお願いしたい」とあらためて警戒を呼びかけた。鳥取県でも無料検査を7月末まで延長予定だという。

 

 ▼夏本番、感染対策は?

 医療関係者は現状をどう見るのだろうか。島根県立中央病院、感染症科部長の中村嗣医師(59)は「ウイルスの活動周期から考えて、また増加することは想定内だった」と冷静に分析した。

新たな型のウイルスの特徴について話す中村嗣医師

 島根県内では従来よりも感染力が強いとされる「BA・5」や「BA・2・12・1」の感染者が複数確認された。中村医師によると、ウイルスの型が従来の型と入れ替わるタイミングで感染者が増加するのは必然的で「そもそも感染力が従来の型より高くなければウイルスは入れ替わることができない」と解説した。現時点で症状は従来のオミクロン株と大きな違いはないようだ。第6波のように急増するかは判断できないという。

 夏場の感染対策については「換気の徹底」と「大声で話さないこと」を挙げる。飛まつ感染のリスクが一番高いとし「大声を出したり、つばを飛ばしたりする場面でなければ、夏場はマスクを外してもさほど問題はない。体育の授業や図書館にいる時は外してもよい」と話した。

熱中症対策に関する厚生労働省制作のリーフレット。屋外で他人との距離が確保できる場合はマスクを外すよう呼びかけている

(出典:厚生労働省ホームページ)

 ただ、病院としては病床に余裕がある状態とは言えず「病床は高齢者や基礎疾患を持った患者が感染すればすぐにひっ迫する。感染防止の意識は持ち続けてほしい」と求めた。

 

 減少したかと思えば一瞬で再拡大するコロナ。今回の局所的な感染が大きな「波」になる前に食い止められるよう、自治体からの情報に注意し、基本になる感染対策の徹底を心掛けたい。