廃止検討が進められる温泉施設「玉造温泉ゆ~ゆ」=松江市玉湯町玉造
廃止検討が進められる温泉施設「玉造温泉ゆ~ゆ」=松江市玉湯町玉造

 2月中旬、松江市が温泉施設「玉造温泉ゆ~ゆ」(松江市玉湯町玉造)の廃止検討に入る方針を固め、地元関係者に伝達した。これまでも修繕を繰り返してきたが、近年になって複数箇所で雨漏りが発生。給湯配管の取り換えも含め、大規模改修に約2億円がかかると分かったためだ。

 ゆ~ゆは旧玉湯町が1996年に約30億円を投じて整備した。三角形と半球体を組み合わせた斬新なデザインは大田市出身の建築家・高松伸氏の設計で、浴場は直径41メートルの5階部分の半球体内に設けられた。

 市によると、施設の構造と不具合の因果関係は現時点で不明という。だが、小学校や役場庁舎などの設計を数多く手掛ける坂本建築設計事務所(同市殿町)の坂本拓三社長(60)は「当時は実用性や耐久性よりもデザインが優先された時代だった」と指摘する。

 今でも2003年に旧鹿島町が整備した鹿島多久の湯と1、2位を争う年間18万人以上の利用がありながら、わずか25年で廃止判断を迫られる事態を招いた行政の結果責任は重い。

  ◇  ◇  ◇

 各市町村は、高度経済成長期や少ない地元負担で施設整備を後押しするバブル崩壊後の国の景気対策に呼応して「ハコモノ」を競うように建設してきた。

 松浦正敬市長の旗振りによる05年と11年の市町村合併で市域を拡大してきた松江市は、旧八束郡8町村が所有する各種施設をほぼそのまま継承。その結果、旧市分を含めて約900もの市有施設を抱えることになり、多額の維持管理費や更新費を勘案して整理する必要に迫られた。ゆ~ゆもその一つだ。

 15年度に市が策定した公共施設適正化計画は、30年間で市有施設の総面積を42%削減すると設定。目標値は山陰両県内で指折りの高さで、直近5年間では、リストアップした89施設の統廃合や機能移転、民間譲渡を推し進めた。一方、地域住民に見過ごせない影響も与えている。

  ◇  ◇  ◇

 適正化計画に基づき、4月に四つの公民館が1カ所に集約される同市東出雲町では、廃止される意東公民館でサークル活動を行っていた22団体のうち、16団体が活動を休止するか解散する見通しとなった。それぞれ高齢のメンバーが新たな統合公民館に出向くことが難しくなることが主な理由だ。意東公民館の永島秋彦館長(73)は「住民にとっては気の毒だ」とやり切れなさを口にする。

 人口が減り続ける中、公共施設の規模を身の丈に合わせることは必要だ。ただ、財政事情を「錦の御旗」に計画遂行の必要性を示し、縮む地域の将来像を説くだけでは市民の理解は得られない。