住民の送迎に向かう菅浦手助すー隊のメンバー=松江市美保関町菅浦
住民の送迎に向かう菅浦手助すー隊のメンバー=松江市美保関町菅浦

 「いつかは世代交代をしなくてはいけない」。63世帯に145人が暮らす松江市美保関町の菅浦地区で、住民の買い物や通院時の移送支援を担うボランティア団体「菅浦手助(てご)すー隊」の小林邦彦代表(69)が懸念をにじませた。

 島根半島の北岸に集落が点在する菅浦地区の高齢化率は56%。かつては民間の路線バスが走っていたが10年以上前に廃止された。

 現在は市がコミュニティバスを1時間に1便運行しているが、市中心部に向かうには乗り換えが必要で、荷物を抱えて移動する高齢者の負担になっていた。

 こうした状況を踏まえ、手助すー隊は2020年12月に結成。メンバー8人が自家用車を使い、商業施設、医療機関に送迎する。

 しかし、担い手の平均年齢は70代で、次世代のメンバー確保が急務だ。共助の形を維持するため、メンバー同士で知恵を絞り合う日々が続く。

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 05年の市町村合併以降、人口減少に伴う利用客の低迷に、運転士の人手不足が重なり、旧町村エリアで定期バス路線の減便や廃止が相次いで表面化した。

 20年9月には、日ノ丸自動車(本社・鳥取市)が運転士不足と採算性の悪化を理由に、米子-松江間の路線を廃止。唯一のバス路線を失った同市東出雲町の住民の求めで一畑バス(本社・松江市)が代替路線を開設したが、新型コロナウイルスの影響で同社の20年度上期の売り上げは前年同期の55%にとどまり、安定運行への不安は拭えない。

 地元の地域協議会からはかねて市営バスによる補完を希望する声があったが、人口集積地を運行エリアとする市交通局も計10路線の維持に必要な運転士が現状で5人足りず、職員の時間外勤務などでカバーしているのが現状だ。

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 中国地方で自治体がバス事業を経営しているのは松江市と宇部市(山口県)のみ。全国各地で民営化が進む中、松江市は市民生活への影響を考慮し、市営バスの存続を前提とする方針を貫いてきた。

 一方、バス運行に要する費用は多額だ。年間5億~6億円を投じ、19年度も民間業者への補助を含めて5億4100万円を支出した。路線廃止や減便を進めてもそれ以上に運賃収入が伸び悩み、公費支出額が大きく変わらない状況が続く。市による従来型の交通政策が限界を迎えつつあると言える。

 公共交通政策に詳しい島根大法文学部の飯野公央准教授は「限られた資源配分をまち単位で考える必要がある」と指摘し、バスやタクシー、鉄道の各事業者でつくるコンソーシアム(共同事業体)が自治体の支援を受けながら地域の実情に適した移動手段を提供する仕組みづくりを提案する。時間帯に応じて移動手段を切り替えるなどすれば、住民の多様なニーズへの対応が可能となる。

 細る住民の移動手段をいかに確保していくのか。共助や民間任せだけではなく、行政としての戦略と方策を明示する必要がある。