失墜した言論の府の機能を取り戻し、政治の場に緊張感をもたらすには、強い野党が不可欠だ。時の政権、与党が脅威に感じるような存在にならなければならない。

 立憲民主党が参院選総括をまとめた。改選前より6議席減らし、比例代表で日本維新の会の後塵(こうじん)を拝した結果に対し、泉健太代表ら執行部に「大きな責任がある」と明記。「野党第1党の立場を脅かされかねない状況」と捉え、重大な危機感を全党的に共有する必要性を指摘している。

 総括は敗因として6点を列挙した。低迷から抜け出せない党のウイークポイントの分析を網羅しており、執行部の問題意識は妥当だ。文書にしただけでは意味がない。党再生へ待ったなしで実行に移してもらいたい。

 総括の中で注目されるのは、第一に「提案型野党」が、国会論戦で「『批判か提案か』の二者択一に自らを縛ることとなり、『何をやりたい政党か分からない』という印象を有権者に与えることになった」と率直に〝反省〟したところだ。

 昨年秋の衆院選の大敗を受けて代表に就任した泉氏は、「批判ばかり」という批判を恐れるあまり、国会での政権追及の矛先が鈍り、野党が担うべき行政監視の役割を十分に果たしたとは言い難かった。それが参院選の敗北につながったと認めたのである。

 第二、第三の要因には、候補者擁立の遅れと野党間の候補者調整の難航を挙げた。衆院選の小選挙区の候補者調整を巡り、限定的な政策に絞ったとはいえ、共産党との閣外協力に合意したことに他党の激しい攻撃を浴び、腰が引けてしまったのが実態だろう。

 打ち出した提案型野党路線が不発に終わり、肝心の参院選の準備も不十分だったのだから、執行部の責任は免れず、本来なら代表辞任に値する。だが、ここで再び新たな党首を選ぶ事態になれば、迷走が避けられそうにないのも現実だ。

 総括では、今後の課題として政府、与党との対立軸を明確にすることを掲げた。有権者の心に届く分かりやすい国家、社会像、財源に裏打ちされたリアリティーのある政策づくりは欠かせない。背中に迫る維新の会との対抗軸も必要となる。そして何よりも「戦う野党」を鮮明にし、提案型から脱皮することが求められているのではないか。同じ旧民主党の流れをくみながら、与党にすり寄る国民民主党とは一線を画した方がいい。

 論戦のテーマは事欠かない。1日の新規感染者が20万人超の新型コロナウイルスの猛威に、岸田政権の対応は後手に回り、物価高騰対策にも国民の不満は募る。凶弾に倒れた安倍晋三元首相の法的根拠なき国葬も、岸田文雄首相の説明不足は明らかだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の関係について実態を解明し、既成事実化する防衛費の大幅増額問題もたださなければいけない。秋の臨時国会に備え、岸田政権と対峙(たいじ)する戦う体制の整備を優先させるときだろう。

 来年春の統一地方選は、党の地力を伸ばすチャンスとなる。国会では徹底的な論戦を挑み、地方では一人でも多くの候補者を擁立し、一丸となって岸田政権との違いや、目指す社会を訴えていく。もはや野党第1党は指定席でない。立憲民主は背水の陣に立たされていることを自覚すべきだ。