内閣府が発表した今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比の年率換算で2・2%増と3四半期連続のプラス成長となった。だが足元では新型コロナウイルスの感染が依然広がるとともに、物価の高騰、米欧での金融引き締め、ウクライナ危機の長期化など多くのリスク要因が重複している。世界および国内景気の今後の変調に警戒を強める時だ。
4~6月期の成長はコロナ感染の落ち着きによる外食や娯楽関連の支出の伸びにけん引された。個人消費は前期比1・1%増と、第6波に襲われた1~3月期の0・3%増から勢いを強めた。堅調な収益を背景に企業の設備投資も拡大し1・4%増と全体のプラス成長を支えた。
一方、成長への寄与がゼロだったのは輸出から輸入を差し引いた外需だ。コロナ禍による中国・上海のロックダウン(都市封鎖)の影響などで輸出が伸び悩む半面、原油高や円安を映して輸入が増えたためとみられる。
エネルギーを海外に頼るわが国は、その高騰で輸入額が膨らみ、当面同じ傾向の続く可能性がある。影響緩和のためにも省エネや再生可能エネルギーへの転換を急ぎたい。
日本のGDPは金額換算で、4~6月期にようやく新型コロナ前の水準を回復した。だが先行きは楽観できない。国内ではまず、コロナ感染の再拡大が懸念材料だ。
最近の第7波で、夏休みシーズンにもかかわらず旅行や外食などの消費に力強さは見られない。行動制限の緩和により景気への打撃は過去ほど大きくないとみられるが、ワクチン接種の継続・拡大など感染抑制の手だてを着実に打つべきだ。
次に物価高だ。原油や小麦など輸入原材料の値上がりに円安が拍車をかけ、電気・ガスや食品の高騰が続く。帝国データバンクの食品メーカー調査によると、9月以降に8千品目超がさらに値上げの予定という。他方でコスト増を販売価格に転嫁できない企業も多い。
問題はインフレに賃上げが追い付かず、家計への打撃となっている点だ。物価を反映した実質賃金は6月まで3カ月連続のマイナスになった。岸田文雄首相は追加の物価高対策として地方創生臨時交付金の増額や輸入小麦の価格据え置きを表明したが、とりわけ影響の深刻な低所得世帯の家計支援につなげることが肝心だ。業績堅調な企業には、さらなる賃金引き上げの余地があろう。
海外の懸念材料では、米欧の中央銀行が利上げを急いでいる影響に注意が必要だ。原油高などによる高インフレに対処するためで、欧州は7月の引き上げによってマイナス金利政策を終了。9月には米欧ともに再び利上げへ踏み切る公算で、円安が進む恐れがある。
ウクライナ危機の長期化とともに金融引き締めによる景気へのブレーキが不可避なため、国際通貨基金(IMF)は最新の経済見通しで、2022年の世界の実質成長率を3・2%と前回4月から下方修正した。23年は2・9%と一段の減速を予測しており、IMFとして「世界同時不況の淵に立たされているかもしれない」との危機感を示したのは当然と言える。
わが国最大の貿易相手国である中国の動向からも目が離せない。ゼロコロナ政策の行方や外交・安全保障面での緊張次第で経済へも影響が及ぶためだ。