全ての新型コロナウイルス感染者の情報を届け出る「全数把握」について、政府が各自治体判断での見直しを認めたことを巡り、山陰両県で今後の感染者への対応に違いが生じることになった。従来通りの把握を続ける島根では、感染者全員の健康観察や積極的疫学調査を引き続き実施するものの、鳥取は高齢者などを除き感染者本人に連絡を取らず、濃厚接触者の特定が困難となる。情報公開のあり方についても変更を検討する。
感染症法では診断した医師が各保健所に感染者の氏名や住所、連絡先などの個人情報を「発生届」として提出するよう義務づけており、この届け出を基に感染者への日々の健康観察や接触者調査を行ってきた。
全数把握の見直し後も、各保健所は感染者の「数」そのものは把握するものの、医療機関からの届け出は各自治体の判断で高齢者や基礎疾患のある人などに限定する。医療従事者や保健所職員の負担軽減につながることが期待される一方、感染者の外出を抑制できずに感染拡大を招いたり、自宅療養者の症状が悪化した場合の対応が遅れたりするリスクが高まる恐れがある。
全数把握を従来通り行う島根では、感染者との連絡の一部を県庁が、健康観察を民間業者がそれぞれ担うなどして、保健所の業務逼迫(ひっぱく)を緩和しつつ、一連の対応を続ける。ホームページなどでの感染状況の公表も変わらず続ける。
鳥取では、届け出の対象外となった感染者は、自宅療養中の症状の変化や食料品の配布などを各保健所内のコンタクトセンターに自ら相談する。希望に応じて日々の健康観察も受けられる。保健所は感染者への聞き取りを基にした接触者調査は行わず、クラスター(感染者集団)については、学校や社会福祉施設など六つのカテゴリーに分けた「対策チーム」を設け、規模の早期把握や検査を進める。
鳥取県新型コロナウイルス感染症対策推進課の福田武史課長は「これからはクラスターや重症リスクの高い感染者に対応を重点化する」と述べた。感染状況の公表については未定で、医療機関からの報告方法などを今後調整する。
(佐々木一全、藤井俊行)