短歌 寺井 淳選

行間に熱き思いの偲ばれて古き日記の饒舌なこと         雲 南 栂  満栄

 【評】「行間」と「饒舌」の間に若き日の日記があるという、まさしく青春のうたです。書かれた文字の向こうに無量の思いがあるということは、短歌と同じですね。

春陽さすヘルン旧居の奥座敷八雲の机脚長かりし         米 子 倉井 正喜

 【評】結句の発見がこの歌の命です。作者はそこにハーンの人となりの一端と、彼の文業の基にあったものを垣間見ているわけです。短歌はその一点で成り立ちま...