8月に放送された人気番組「東大王クイズ甲子園2022」で優勝した松江高専クイズ研究会のメンバー=松江市西生馬町、松江工業高等専門学校
8月に放送された人気番組「東大王クイズ甲子園2022」で優勝した松江高専クイズ研究会のメンバー=松江市西生馬町、松江工業高等専門学校

 松江工業高等専門学校(松江市西生馬町)のクイズ研究会が、8月24日に生放送されたTBS系のクイズ番組「東大王クイズ甲子園2022」で優勝し、日本一に輝いた。番組での裏話や日頃の活動について聞き、こちらから地元に関するクイズも出題してみた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 松江高専クイズ研究会は2018年に発足し、現在の部員は1~5年生の計35人。「東大王」に出場したのはいずれも情報工学科5年の佐々木涼太郎さん(19)、柿田浩佑(こうすけ)さん(20)、藤原一馬さん(20)の3人。「東大王」の決勝では強豪・栄東高(さいたま市)や埼玉県立浦和高(同市)との接戦を制し、念願の優勝をつかんだ。

▷悔しさバネに設立した研究会

 メンバーはいずれもクイズ番組が好きでよく見ていたという。佐々木さんは中学生の時、日本テレビ系の「高校生クイズ選手権」を見て「高校生になったら自分も出場しよう」と思い立ったという。その年の高校生クイズは予選を勝ち上がった高校生たちがアメリカ横断をしながらクイズに挑む形式で、佐々木さんは「物知りというだけでアメリカに行けるのかと驚いた。自分も行きたいと思ったし、行けると感じた」とクイズ番組への思いが募ったという。

談笑するクイズ研究会のメンバー。左から藤原一馬さん(20)、柿田浩佑(こうすけ)さん(20)、佐々木涼太郎さん(19)

 松江高専に入学後、佐々木さんは仲のいい友人と高校生クイズ選手権に参加したが、島根県予選で敗退した。「負けたのが悔しくて、研究会を作った」と、佐々木さんは同じようにクイズが好きという藤原さんらと計4人でクイズ研究会を立ち上げた。結成後は、さまざまな選手権に出場した。

▷流れ取り戻し つかんだ優勝

 クイズ大会では時事、歴史、漢字、芸能、計算などさまざまなジャンルから問題が出される。予選大会は特に、1時間など短時間で難しい問題が連発されるため、メンバーの得意分野と問題との「巡り合わせの良さ」も勝敗を大きく左右するという。戦いを勝ち上がるには、日頃培ってきた知識だけではなく、運の良さも重要な要素になるようだ。今回の勝利ではその「巡り合わせ」が良かったという。

 もちろん、コツコツと練習を重ねて身につけた実力もある。普段の練習では部員が自作した「早押しスイッチ」を使い、過去のクイズ大会の問題集を使って本番に備えている。

部員がアルバイト代で部品を購入し、手作りした「早押しスイッチ」。ボタンを押すと音が鳴りランプが光る仕組みで、練習に欠かせない道具だ

 今回の「東大王」では強豪校の栄東高、浦和高とともに決勝に残り、最後まで結果が読めない接戦となった。リードされ、逆転して、と繰り返しながら、競り勝った試合について、佐々木さんは「3人でつかんだ勝利」と振り返った。

 松江高専クイズ研究会は大会に出場する際に「流れを重視している」と言い、今回も「流れ」を取り戻したことが大きな勝因だったと振り返った。早押しクイズで戦った終盤、トップチームと数十点の差を付けられ、士気が下がりかけたが、柿田さんが2問連続正解したことで勢いが戻った。

問題集を見ながらクイズについて話す3人。仲の良さが自慢という

 佐々木さんは「柿田が連続正解して、土俵に押し戻してくれた感じだった。あそこからエンジンがかかった」と、当時の心境を話した。放送後、視聴者からは「熱い試合で心が躍った」といった声が届き、佐々木さんは「クイズで人を感動させられるんだと感慨深かった」と振り返った。

▷王者に挑戦!

 

 せっかくなら、日本一になったメンバーにクイズを出し、回答している様子を間近で見たい。山陰地方にまつわるクイズを5問作成し、ホワイトボードに3人で一つの回答を書いてもらう方法で手作りの「地元クイズ番組」にチャレンジしてもらった。

 1問目は「宍道湖と中海、大きいのはどっち?」。3人は「せーの、で指さそう」と相談しながらも、おおよその見当は付いている様子。「こっちにしよう」と回答をまとめてホワイトボードに書く。3人の回答は…。
 「なかうみ!」正解!

見事正解!身振り手振りでリアクションを取ってくれるため、雰囲気が盛り上がる

 その後も「島根県の丸山達也知事の出身県は?」「松江城を築いたとされるのは?」「松江城のほかに、天守が国宝に指定されている城は?」「政府により再稼働計画が進められているのは島根原発の何号機?」と、山陰にまつわる問題を続けた。

 3人は時折、回答に悩む様子を見せながらも、5問中4問を正解した。唯一、正解できなかったのは「丸山達也知事の出身地」。兵庫県か神奈川県かで悩み「神奈川県」と回答したが、正解は福岡県。「都市の規模感」を頼りに兵庫か神奈川かに絞り込んだが、どちらも不正解だった。3人は「あー、全然違った」「もうちょい西だったか…」と残念そう。「福岡、行きます!」と笑顔で締めくくった。

惜しくも不正解。それでも5問中4問を余裕の表情で正解した3人。王者の実力を感じた

 いくつかある選択肢を相談しながら絞り込んだり、回答に自信があるメンバーが率先して文字を書き込んだりと、連携がとれたプレーを目の前で見せてもらった。余裕の表情で回答の解説までしてくれるメンバーを前に「もっと難しくすれば良かった…」とかなり反省。するすると答えられてしまったのは悔しいが、実力を間近で体感できた。

 和気あいあいと楽しそうにクイズに取り組む3人を見て、好きなことに熱中する若者ならではのエネルギーがひしひしと伝わってきた。卒業後は3人とも県外の大学へ編入する予定と言うが、卒業するまではぜひ、クイズで島根を盛り上げてほしい。