日本最大級のらせん構造の国道、奥出雲おろちループの開通30周年を記念した「奥出雲おろちループグルメマラソン」が9月24日、島根県奥出雲町で開催された。県内外から415人が参加し、36・6キロのコースを走り、途中ではJR木次線に乗車し、手打ちそばのもてなしを受けるなど楽しんだ。山陰中央新報社からもランニング好きな男性5人でチーム戦に参加した。初開催の奥出雲マラソンの体験を紹介する。(雲南支局・山本泰平)
【写真特集】奥出雲おろちループグルメマラソン 415人が健脚競い、汗とよだれの36.6キロ
大会はソロかリレー(1チーム2~5人)で参加する。午前8時30分、ソロの参加者がスタートを切った。糸原保・奥出雲町長のピストルを合図に、実行委員や9時スタートのリレー参加者らの声援を受けながら、7秒間隔で2人ずつ駆け出した。
◇グルメマラソン楽しむ
天気は晴れ、絶好のマラソン日和。奥出雲のおいしい空気と秋の日差しを浴びて走る「グルメマラソン」が始まった。
「グルメマラソン」の名の通り、コース途中のエイドステーション(エイド)では、マイタケスープ(第1エイド)▽水車びきの手打ちそば(第2)▽シャインマスカット、リンゴ、ブルーベリー(第3)▽こんにゃく(第4)ーなど奥出雲町の特産が振る舞われた。食べてすぐ走り出す人やゆっくり味わう人、談笑する人、それぞれが思い思いのグルメマラソンを楽しんでいた。


山陰中央新報社からはリレーに参加し、チーム名は「山陰のニュースはSデジ!」。上位に食い込んで、参加者や地元の皆さんにアピールしたい熱い思いで集まった。

記者の担当は第4エイドの八川小学校からゴールの道の駅まで10・8キロ。途中、列車で八川ー三井野原間を進むことができるコース(事前申し込みが必要)。木次線を利用することもできるという、特色のあるマラソンだ。


◇声援が大きな励みに
午前11時20分ごろ、第4走者からタスキを受け取った。乗車できる列車は、数百メートル先の八川駅を午後1時17分発。時間に余裕があるため、八川小から約7キロ先の出雲坂根駅まで走ることにした。
走るコースは、これまで取材で何度も通った道で何度も見た田園風景のはず。ただ、車を運転しながら窓越しに見る景色と、自然の風を感じて自分の脚で走りながら見る景色は全然、違った。運転していると気がつかない風や水、虫の音…。秋の自然の音や香りを五感すべてで楽しむことができた。
感傷にゆっくりひたっている時間はない。レースなのを思い出した。出雲坂根駅までは坂道が延々と続く(ように感じた)。2キロほど走ると、普段の運動不足がたたり、景色を楽しむ余裕は失われていった。疲れを感じながら、ひたすら脚を前に出していく。気がつけばとぼとぼと歩いている。そんな時、コース沿いの住民や他の参加者から「がんばれー!」と声援が飛んできた。すると不思議と体が軽くなり「もう少し頑張ろう」と気持ちが前向きになった。

応援のパワー、そして奥出雲町の方々の温かさを感じながら、ついに出雲坂根駅に到着した。延命水を顔に浴びて休憩をとり、列車の時間に合わせてリレーメンバーが運転する車で八川駅に向かった。
◇スイッチバックに歓声
午後1時15分ごろ、八川駅に停車する普通列車には、電車に乗ろうとするマラソン参加者の列ができていた。定員約100人という車両には、マラソン以外の観光客を含め乗客が約80人と大盛況。さながら「山手線」のような満員電車だった。
列車が進み、出雲坂根駅を経て進行方向を変えながら急勾配を上がる、名物の三段式スイッチバックを体験した乗客からは「すごーい」と驚きの声が相次いだ。木次線の醍醐味(だいごみ)を体験してもらう狙いは大成功だと思った。
三井野原駅で降車し、おろちループのハイライト・三井野大橋を通ってついにゴール。ゴール後には仁多米の新米を使ったおにぎりやしまね和牛の焼肉が用意され、参加者の疲れを癒やした。
◇来年のリベンジ誓う
ゴール近くで参加者を迎えた道の駅・おろちループの藤原紘子駅長(38)から「お疲れー。最後だけ爽やかに走ったね!」とねぎらい? の言葉を頂いた。途中、歩いていたことはお見通しのようだ。
少し落ち着いてから配布されたQRコードを読み込んで結果を確認した。リレー部門最下位(37位)。1位との差は約2時間半で、圧倒的な最下位だった。


今回は最下位だったが、グルメマラソンは来年も開催される予定という。「来年こそは」とリベンジを誓った。

マラソンをゴールした後、とてもすがすがしい気持ちになった。朝早くから太陽を浴びて運動し、おいしい食事をとる。大人になり、仕事を始め、いつの間にかそういう一日を過ごさなくなっていた。改めて健康的な生活の大切さを実感し、貴重な体験になった。普段は最寄りのコンビニまでの200メートルですら車を使っていたが、これからは歩こうと思う。