昭和~平成初期の人気映画シリーズ「男はつらいよ」の第13作(1974年)で、大田市温泉津町が舞台となったことにちなみ、地元住民やビール醸造会社がオリジナルの「寅さんビール」を商品化した。地元産のユズで爽やかさを演出するだけでなく、主人公・車寅次郎(寅さん)の恋模様を連想させる甘さと苦みを表現。地元スーパーで売り出し、温泉津への来訪を促す一手としても注目される。 (曽田元気)
【写真特集】寅さんビール誕生秘話 中身は「温泉津の人情」(Sデジオリジナル記事)
シリーズは故・渥美清さん演じる寅さんが起こす騒動や実らない恋模様を描く人情喜劇。温泉津町や島根県津和野町が舞台となった「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」は吉永小百合さんがマドンナ役を務めた。
寅(とら)年生まれで温泉津町在住、石見麦酒(江津市桜江町長谷)の和田谷光輝さん(36)が作品に注目し、地元女性グループ温泉津女子会が企画。温泉津町井田地区のユズで爽やかさを出し、マドンナにほれながらも成就しない寅さんを連想させる「最初は甘く、後味に苦み」が特徴だ。
ラベル作りでは、権利の都合で寅さんの正面の写真が使えないのを逆手に取り、ゆのつタワーなど夕暮れ時の町並みを背景に寅さんのシルエットを配し、表情をファンが想像できる仕上がりに。「おかえり寅さん ただいま温泉津」の文字も入れた。
24日は和田谷さんや、寅さん風の衣装に身を包んだ女子会の渡利章香(しょうこう)会長(50)、近江雅子さん(42)が市役所で楫野弘和市長と面会。茶色の帽子と腹巻き姿の渡利会長は、主題歌のイントロを口ずさみながらビールを披露し「ガブガブ飲んでほしい。昭和の懐かしさを感じられる」とPR。楫野市長は「うまい。確かに苦みもクッとくる。失恋した時の味…」と笑った。
28日に温泉津町のスーパーおがわで、まずは限定100~150本で販売を始める。29、30両日には寅さんの地元東京・葛飾区である寅さんサミットに出品。330ミリリットルで770円。
和田谷さんは「寅さんのような人情を大切にする姿勢が今の時代に大切。飲んで温かい気持ちになってほしい」と願った。