シカが嫌がる忌避音の自動発生装置が取り付けられた車両。前面左下にスピーカーが取り付けられている
シカが嫌がる忌避音の自動発生装置が取り付けられた車両。前面左下にスピーカーが取り付けられている
車両に取り付けられたシカの忌避音が鳴るスピーカー
車両に取り付けられたシカの忌避音が鳴るスピーカー
シカが嫌がる忌避音の自動発生装置が取り付けられた車両。前面左下にスピーカーが取り付けられている
車両に取り付けられたシカの忌避音が鳴るスピーカー

 線路に進入する野生のシカと列車との衝突事故を減らそうと、JR西日本岡山支社が、シカが嫌がる忌避音の自動発生装置を車両に取り付けて走行する実証実験を昨年秋から続けている。4月末までに衝突事故はなく、同支社の担当者は「シカが活発になる春以降も検証を続ける。事故減少を期待したい」と話す。

 装置は鉄道総合技術研究所(鉄道総研、東京)が2017年に開発。実証実験では姫新線の佐用(兵庫)―新見(岡山)間を走る気動車2両の前後に忌避音が鳴るスピーカーを取り付けた。

 衛星利用測位システム(GPS)で自動制御され、衝突が多い夜間―早朝に山間部など28地点で鳴らす設定にした。

 忌避音は、シカが群れの仲間に発する警告音「キャッキャッ」やイヌの「ワンワン」という鳴き声、オオカミの「ワォーン」という遠ぼえを模した3種類の音を混合。数百メートル先まで聞こえる。

 シカは全国的に個体数が増え、分布域も拡大。各地で農林業への被害が深刻化し、鉄道事業者も安全輸送や遅延防止の妨げになる接触事故に頭を抱える。同支社管内でも18年度は72件、19年度は129件と増加傾向だ。

 シカは鉄分などのミネラルを補給するためレールをなめようと線路に入ると考えられており、支社はフェンスを設置したり、山中にミネラル分を固形化した「誘鹿材」を置いたりして、線路から鹿を遠ざける対策を講じてきた。だが忌避音の装置は視点を変え、走行中の列車自体を避けてもらう発想から生まれた。

 鉄道総研の実験では、忌避音を鳴らして走行すると、鳴らさない場合と比べ、100キロの間に試験員がシカを目撃する回数が45%ほど減少した。