与党党首会談で自公連立政権の合意文書を交わす自民党の岸田首相(右)と公明党の山口代表=2021年11月1日、国会
与党党首会談で自公連立政権の合意文書を交わす自民党の岸田首相(右)と公明党の山口代表=2021年11月1日、国会

 自民、公明両党が政権復帰して26日で10年になった。この間、日本のありようを大きく変える政策決定がなされてきた。

 国内外の情勢変化に適応するためだとしても、政治主導をはき違えた独善的な手法が取られたことも否定できまい。政府、与党には民意を踏まえた謙虚な政権運営を改めて求めたい。

 自公は2012年12月の衆院選で、3年余り続いた民主党政権を倒し、自民党総裁の安倍晋三氏が首相に再登板。初閣議で「真の政治主導によって『新しい日本』の国づくりを進めるための大胆な政策を果敢に打ち出す」との首相談話を決定した。「真の」を付けたのは、自民党が野党時代、民主党の政権運営を「決められない政治」とやゆしてきたからであろう。

 しかし、忘れてならないのは、政治主導で方針決定する前に、国民の理解を得ようとする努力である。世論を二分するような課題への対処であればなおさらだ。

 安倍政権は、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認に踏み切り、安全保障関連法を成立させた。日本が戦争に巻き込まれる危険性を高めると批判されたが、与党の圧倒的多数を背景に、反対意見を押し切る形になった。

 重要とされる安保情報を漏えいした場合、最高で10年の懲役を科せられる特定秘密保護法制定も同様だ。選挙で勝利を重ねても決して有権者の白紙委任ではなく、異論を封じ込めてまでの政治主導は許されない。

 7年8カ月続いた安倍政権を継いだ菅義偉政権でも、政治主導の誤用と言わざるを得ないケースがあった。

 菅氏は首相在任中の20年、日本学術会議が推薦した会員候補のうち、安保法に反対するなどした6人の任命を拒否した。

 首相の任命権は「形式的」とした過去の国会答弁と矛盾し、憲法で保障された「学問の自由」を侵害すると反発を受けたのは当然だ。それでも菅氏は明確な理由を明らかにせず今に至っている。

 「聞く力」を売り物にした岸田文雄首相は、安倍氏らの政治手法とは一線を画すと思われたが、政権発足後、1年余りが過ぎて怪しくなってきた。

 他国のミサイル発射拠点を攻撃できる反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や増税を含む防衛費の大幅増額の決定過程がそうだ。安保政策の大転換にもかかわらず、国民的議論に付す姿勢が首相には感じられなかった。

 岸田首相が自民党総裁選時、「安倍・菅政治」を念頭に指摘した「民主主義の危機」を自ら招いているといえよう。

 一方、公明党は「1強」状態にある自民党の「ブレーキ役」を任じてきた。消費税増税の際に軽減税率導入を自民党に認めさせるなど、一定の存在感は示したといえる。

 その半面、「平和の党」を掲げながら安保問題では自民党追従の印象が強い。国政選挙の比例代表得票数の低減にみられる有権者の公明党離れの一因ではないか。党の立ち位置を再確認すべきだろう。

 自公が初めて連立政権を組んだのは1999年。いったん下野するものの通算では約20年、政権の座にある。不祥事によって議員辞職や閣僚辞任が相次いでいるのは、政権内に生じているおごりや緩みのためであろう。自浄能力がなければ、政治主導のかけ声もむなしく響くだけだ。