戦国末期の石見銀山を舞台に、過酷な環境を生き抜いた女性の一代記「しろがねの葉」(千早茜著、新潮社)の直木賞受賞を受け、地元の大田市は活気に沸いた。ガイドは早速、観光客への説明で触れ、市は千早さんを招いた講演会や作品世界に掛けた企画展の開催を検討。官民挙げて「銀の輝き」に磨きをかけ、世界遺産・石見銀山遺跡の魅力と認知度アップに向けて力がこもる。 (曽田元気)
「石見銀山を書いた作品が直木賞に選ばれました」。受賞発表から一夜明けた20日、石見銀山遺跡の中心部・大田市大森町内で、石見銀山ガイドの会の山根幸文さん(75)は観光客にホットな話題を提供した。
ガイド歴15年の山根さんは、別の作家を案内した経験があり、世界の経済を動かした石見銀山のスケールの大きさが作家の琴線に触れる場所だと感じる。
銀山に関する書籍を読んで訪れる観光客も多く、「(今回の受賞で)ガイドの幅がさらに広がりそう」と期待する。山根さんの案内で受賞を知った京都府宇治市の会社員、森田悠記子さん(45)は「ぜひ読みたい。景色を思い浮かべながら楽しめそう」と声を弾ませた。
ただ、受賞発表前から人気の作品は書店で品切れ状態。市内の市立図書館には貸し出しの予約が相次ぐ。
執筆に協力した石見銀山資料館の仲野義文館長(57)は、受賞報告を受けた編集者に、地元の盛り上がりや、千早さんの講演会を求める声を伝えた。千早さんが「間歩カラー」と表現する黒色のワンピースと銀色の靴で受賞会見に臨んだ姿も地元ではうれしい場面だった。
市は、島根県や地元関係団体と連携し、講演会や、作品の舞台となった当時の女性の暮らしぶりなどが分かる内容の企画展ができないか検討を始めた。
世界遺産登録15周年の2022年は記念行事で盛り上がり、次に迎えるのは登録20周年、銀山発見500年が重なる27年。読書好きの楫野弘和市長は「千早先生にお会いすることを楽しみに、27年の登録20周年、発見500年につなげたい」とコメントを寄せた。