北京市内で卓球を楽しむ市民ら。中国国家統計局は2022年末の総人口が前年末と比べ、85万人減少したと発表した=17日(共同)
北京市内で卓球を楽しむ市民ら。中国国家統計局は2022年末の総人口が前年末と比べ、85万人減少したと発表した=17日(共同)

 中国政府は2022年末の総人口(台湾、香港、マカオを除く)が前年末から85万人減り、14億1175万人になったと発表した。インドの推計人口14億1200万人を下回っており、世界一の人口大国の座を同国に譲り渡したもようだ。

 中国の人口減少は61年ぶり。中国は1970年代末からの改革・開放政策の下、労働人口の増加による「人口ボーナス」で米国に次ぐ世界第2の経済大国に成長した。今後、少子高齢化と労働人口減により、成長が減速するのは避けられまい。

 異例の3期目に入った習近平国家主席は、今世紀半ばまでに近代化された「社会主義強国」の実現を目指すと宣言した。今後は中低成長の中で、少子高齢化対策を進め、貧富の差の是正や年金、福祉制度の充実に力を注ぐ必要があろう。

 22年の国内総生産(GDP、速報値)も前年比3・0%増にとどまり政府目標の「5・5%前後」にとどかなかった。新型コロナウイルスの感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策や不動産業不振などが響いた。

 政府は既にゼロコロナを終了させ、経済再生を目指す。しかし、行動規制の緩和後、感染者が爆発的に増加し、新たな変異株が広がる危険性も抱え、先行きは不透明だ。まずは国民の生命と健康を第一として無理のない今年の成長戦略と目標を定めるべきだ。

 中国の人口は1949年の建国時、約5億4千万人だった。毛沢東は「人口が多ければ多いほど国の武器となる」という人口資本説を説き、異議を唱えた学者を失脚させた。増産政策「大躍進」運動の失敗で多数が餓死した60~61年を除き、人口は増え続けた。

 少子高齢化と人口減への危機感を強めた習政権は2016年に一人っ子政策を廃止。21年には産児制限を事実上撤廃し、出産奨励に転じたが、少子化は進む一方だ。出生数は6年連続で前年割れし、1950年以降初めて1千万人を下回った。

 日韓や欧米の先進国と同じように中国の若者もあまり子どもを持とうとしない。共産党機関紙、人民日報系の環球時報は人口減は日米欧もたどった道で「中国特有の現象ではない」と報じた。

 少子高齢化対策に特効薬はなく、各国ともに頭を痛めている。アフリカの人口増も問題化しており、人口問題はコロナや地球温暖化、エネルギー対策と同じようにグローバルな課題だ。お互いに知恵を出し合って対策を講じたい。

 中国は日本にとって最大の貿易相手国で、多数の日本企業が中国に進出している。人口減が始まったとはいえ、当面十数億の人口は維持される。「世界の工場」「巨大市場」の魅力が急に薄れるわけではない。

 経済大国・中国の動向は世界全体の経済を左右する。安定した成長と公正な経済貿易の制度づくりが期待される。安全保障の面で日米との対立が強まっているが、争いを経済に波及させないよう求めたい。

 日本は新型コロナウイルスの感染者が急増した中国からの入国者について水際対策を強化した。中国は「差別的、政治化」と反発して日本で中国への入国ビザ(査証)の発給を停止した。日本企業の社員の赴任や出張に影響しかねない理不尽な報復が信用失墜を招いていることを習政権はきちんと認識するべきだ。