日本各地で相次ぐ広域強盗事件の指示役と疑われる人物が収容されているマニラの入管施設=28日(共同)
日本各地で相次ぐ広域強盗事件の指示役と疑われる人物が収容されているマニラの入管施設=28日(共同)

 関東や関西など各地で相次いだ広域強盗事件の捜査が大きな節目を迎えた。フィリピンの首都マニラにある入管施設に収容中の日本人が「ルフィ」などと名乗り、交流サイト(SNS)を通じて実行役を集めたり、犯行を指示したりしていた疑いが強まり、警察当局は収容中の男4人の身柄引き渡しに向け、現地当局と調整を進めている。

 誰がルフィか特定できていないが、この中にいるとみており、警視庁は過去の特殊詐欺事件に絡む容疑で4人の逮捕状を取っている。収容施設では本来、通信機器の使用は禁じられているものの、職員に賄賂を渡せばスマートフォンやノートパソコンを手に入れて使うことができるという。

 警察庁によると、東京都狛江市で今月に90歳女性が殺害されるなど、昨年から同一グループによるとみられる強盗は関東を中心に8都県で14件発生。関連が疑われる強盗や窃盗など6件も6府県で起きている。複数で押し入り、住人に暴行を加えるなど荒っぽい手口が目立つ。一部の事件で30人以上を逮捕したが、末端の実行役ばかりだ。

 ルフィは複数の事件に関与したとされる。警察当局は速やかに「指示役」の身柄を確保して広域強盗グループの実態を徹底的に解明し、広がりを見せる社会不安の払拭を急ぐ必要がある。併せて官民が連携し、インターネット上で実行役を募るような情報の監視強化などにも取り組みたい。

 ルフィは複数の人物によって「闇バイト」の募集や情報交換、犯行の指示などに際して、SNSのアカウント名として使用されていたとされ、これまでに逮捕された実行役のスマホに残っていた。「キム」や「ミツハシ」といったハンドルネームも確認されている。

 「日当100万円」など高額報酬に釣られて闇バイトの募集に応じた実行役らに自分の顔と運転免許証を並べて撮影した画像を送信させたり、家族構成を聞き出したりした上、グループから抜けようとすると怖い目に遭うと脅迫。実行役を入れ替えながら各地で犯行を重ねていたとされる。

 ルフィやキムの名前は昨年から東京都稲城市や中野区、山口県岩国市などで発生した事件で使われ、中野区の事件で逮捕された男が使ったレンタカーから狛江事件の現場住所を書いた宅配伝票が見つかっている。スマホにも「狛江」について記されたSNSのやりとりが残っており、狛江の住宅から奪われたとみられる高級腕時計もあった。

 ルフィ、キムはメッセージを自動的に消去できる秘匿性の高い通信アプリを利用していたが、実行役らに電話をした際に発信元を示す国番号がフィリピンの「63」だったことが分かっている。

 警察当局が身柄の移送を求めている4人は、フィリピンで2019年に36人が拘束された特殊詐欺グループの幹部だったとされ、日本で特殊詐欺の取り締まりが強化されたため、ネットを通じ実行役を集める手口はそのまま、広域強盗にシフトしたとみられている。

 社会の脅威になっており、指示役の逮捕と全容解明が欠かせない。一方で資産のありそうな家にどれくらい投資できるか電話で尋ねたり、特定の住宅を下見したりする不審な動きについて地域で情報を共有し、警察などと連携して警戒する仕組みを整えることも考えたい。