一体どれほどの地元有権者が納得しているのだろう。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点を巡る細田博之衆院議長(78)=島根1区、11期=の説明についてである。
昨年秋2度にわたり説明に応じたが、文書のみや非公開での回答にとどまり、「神対応」ならぬ〝紙対応〟と揶揄(やゆ)された。
年が明けて、通常国会召集翌日の1月24日、議院運営委員会の与野党代表者に対し、接点について説明。自民党安倍派の前身である細田派の会長当時、国政選挙で教団票を差配したとの疑惑について、「全くそういったお願いはしたことはない」と否定した。
ただ、公開の委員会でも、記者会見でもない、議長公邸で懇談に応じる形式の密室の場。これでは衆院議員の範を示すべき議長が、説明責任を果たしたとは言えないだろう。
そんな細田氏が本紙の単独インタビューに応じて、旧統一教会問題について初めて口を開いた。記事(1月29日付掲載)の教団問題部分の回答を再掲する。
「この問題は記者会見を要請されているから、山陰中央新報社だけに話したというと不公平になるので言えない。ただ、私としてはちゃんと経緯を話している。島根県の人はいろんなことをご存じだから、心配はしていない」
文字面を追うと、首をひねることばかりだ。記者会見を要請されているから1社だけに答えることはできないという主張はもっともらしいが、そもそもこれまで会見に応じる姿勢を見せていない。今後、要請に応える意向を示したわけでもない。
ちゃんと経緯を話していると言うものの、文書回答を含め、渋々説明に応じたといった感が強い。これでは政治不信を招いた教団と自民党の関係の解明に後ろ向きと批判されても仕方ないだろう。
「島根県の人はいろんなことをご存じ」というが、「いろんなこと」とは何を指すのか。人柄か、実績か-。その中に教団との接点は含まれてはいまい。だからこそ、有権者は真相を知りたいと願っている。地元支援者から「やましいことがなければ会見でしっかり説明すればいい」という批判が上がるのは当然のことである。
細田氏を巡っては、2021年の前回衆院選時、陣営が地元議員らに1人当たり数千円の労務費を支払っており、公選法違反(買収)の疑いがあるとして告発を受けている。週刊誌でセクハラ疑惑を報じられながら説明が不十分などとして、昨年6月には立憲民主党が不信任決議案を提出し、否決された。
昨年来、次々と取り沙汰される醜聞に正面から向き合って対応する姿は見えないだけに、地元有権者の中に不信感が広がっている。
細田氏は次期衆院選に12選を目指し、出馬する意向を固めたという。本紙のインタビューにも「私も元気だから、今のところ、地域のため、国家のために頑張る気持ちに変わりはない。まだまだお役に立たないといけない」と意欲を示す。立憲民主党は亀井亜紀子氏(57)を立候補予定者に決めており、前回選と同じ構図になる可能性が高い。
細田氏の高齢を懸念する声も根強いが、県民の利益を優先して考え行動する人材であれば、年齢は関係ないだろう。
ただし、それを容認する前提として、有権者との信頼構築が不可欠なのは言うまでもない。