温泉や公衆浴場で乳がん手術や皮膚移植などの傷跡を隠す専用入浴着の着用に理解が広がっていない。厚生労働省の調査によると、入浴を拒否する施設は2割弱にのぼる。衛生面などでの誤解があるほか、島根、鳥取両県を含む多くの自治体で周知が徹底されていないためだ。誰もが気兼ねなく入浴を楽しめるよう理解の促進が求められる。
(吉田真人)
入浴着は、傷跡などがある人が他人の視線を気にすることなく入浴できるように作られた専用の肌着。浴槽に入る前に、付着したせっけん成分などを洗い流せば衛生管理上問題のない素材でできている。厚労省は2018年6月、入浴着への理解や、不当な理由による入浴拒否が起きないよう都道府県などに周知した。
ところが、同省が22年12月に都道府県や特別区を対象にした調査で、入浴着での入浴について事業者などに周知しているのは59%にとどまり、島根、鳥取両県は「周知していない」と回答した。
事業者向け調査では65%が入浴可能と回答した一方、施設内にポスターを貼るなどして周知しているのは34%だった。入浴を不可と答えた17%の事業者は、利用者同士のトラブルや衛生面などを理由に挙げた。13%は「可否を決めていない」や「イベント時のみ可」とした。
島根県がんピアサポーターの浜崎順子さん(58)=松江市上乃木3丁目=は、14年に乳がんを患い、右乳房を切除した。元々温泉が好きで、入浴着を手に入れたが、周囲の目が気になって利用することができなかったという。
島根県は今月、県内の施設で衛生管理を理由に断られたという声が寄せられたこともあり、...