8月下旬、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある大統領府前の「5月広場」に集まった30人ほどが、塔の周りを時計回りにゆっくりと歩き始めた。メガホンで名前が読み上げられると、参加者たちは「プレセンテ(ここにいます)」と、声を大にして呼応する。掲げられた横断幕には「記憶」「真実」「正義」の文字が記されていた。

 毎週木曜日に行われる「行進」には、白いスカーフを頭にまとった女性の姿がある。1976年のクーデターで成立した軍事政権下で軍や警察によって拉致され、...