大江健三郎は自身にとって重要な三つの出来事として、戦後民主主義の体験、広島の被爆者との出会い、障害のある長男との共生をあげている。

 最初の二つに関わる、平和憲法への敬意・愛着と、核兵器廃絶の願いを表明することを、大江は作家の責務として自らに課していたように見える。

 作家が社会の直面す...