WBC優勝を決めた日本代表選手たちの映像とともに喜ぶ、パブリックビューイング会場の人たち=22日午前、東京都港区
WBC優勝を決めた日本代表選手たちの映像とともに喜ぶ、パブリックビューイング会場の人たち=22日午前、東京都港区

 野球の国・地域別対抗戦、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本が3大会ぶりの優勝を果たした。新型コロナウイルスの流行もあって6年ぶりに開催された世界一を争う大会。ハイレベルのしびれる戦いを制した日本代表をたたえたい。

 昨年のワールドカップ(W杯)で健闘したサッカー人気に野球は押され気味だった。しかし今大会で野球の魅力を再発見したファンも多いのではないか。打線に大リーグのスターをずらりと並べた米国を決勝で破ったたくましさ。驚異的なテレビの高視聴率が関心の高さを示していた。

 栗山英樹監督が大リーガーも含めて現在、想定できる日本のベストメンバーを組んだことをまず評価したい。とりわけ投打二刀流で大活躍した大谷翔平選手のファンへの訴求力はすさまじく、これがチーム全体への後押しとなって返ってきた。

 日本は第1回(2006年)第2回(09年)大会を、バントや機動力も交えたきめ細かい野球で連覇した。得意のスモールベースボールの基盤に今回は大谷、吉田正尚、村上宗隆選手らの長打力と、大谷、佐々木朗希、山本由伸投手らが代表する力で押す投手力が加わっていた。

 決勝でも力強い新生・日本野球の特徴が表れた。村上、岡本和真選手の豪快な本塁打。若い投手も交えた継投は、いずれもスピード豊かで変化球もよく切れていた。日本がパワーでも強豪に対抗した価値ある優勝だ。

 大リーグ機構などが主催するWBCは、野球の世界への普及と、米大リーグの市場価値拡大を目指している。1次リーグ開催地の日本などが米国に協力しており、サッカーのW杯のような国際統括団体は機能していない。

 今大会では野球が地球スポーツの域に達していないことも再認識した。予選と合わせた参加国・地域数はわずか28。20チームによる本大会も1次リーグではレベル差があり大差試合が目立った。

 米国、日本に有利ともみられる組み分けなど、最大のマーケットである日米でのテレビ放映、興行に配慮した運営が目立った。大会中に準決勝以降の対戦相手が当初予定から変更されたのも米国びいきとの批判がある。公平さが担保されるべき国際大会での未成熟さが顕著だった。

 五輪やW杯などでは国籍が代表資格だ。WBCでは国籍に加え、両親のどちらかの国籍など幅広い条件を採用している。普及度を考慮した策で、欧州などに野球を広める一助にはなろう。日本代表では日系米国人のラーズ・ヌートバー選手が活躍して人気を集めた。

 次回大会は26年の予定だ。五輪から除外された野球唯一の「世界一決定戦」としてどう発展させるか。シーズン前の故障リスクを考慮して、大リーグの有力投手には出場回避も目立った。より多くのトップ選手が参加できるよう開催時期の見直しも必要だし、大会規定にも改善点は多い。営利追求だけでなく、スポーツとしての公正さを大事にしてほしい。

 明治の初めに米国から日本に野球が伝来してから約150年。WBC決勝の大舞台では初めて発祥国と対戦した日本は、国民的競技となった和製ベースボールの成熟ぶりを示した。スポーツ交流史の長い歩みと深みを感じさせる快挙でもあった。