とっとり花回廊のバラ園で咲き誇る大輪のバラ
とっとり花回廊のバラ園で咲き誇る大輪のバラ
愛情を込めてバラの手入れをする鳥飼健太さん
愛情を込めてバラの手入れをする鳥飼健太さん
とっとり花回廊のバラ園で咲き誇る大輪のバラ 愛情を込めてバラの手入れをする鳥飼健太さん

 桜、チューリップ、ボタンと春を彩る花の開花が今年は早まり、見逃してしまった人もいるのではないでしょうか。園芸愛好家だけでなく、誰が見ても感動できる花がまだあります。花の女王、バラです。花のテーマパーク、とっとり花回廊(鳥取県南部町鶴田)は、チューリップやユリで知られますが、実はバラの美しさは、園芸家の間では有名です。「管理は日本一」とも言われ、そのバラが今週末、見頃を迎えます。200品種、千株のバラを美しく咲かせ、維持するための栽培の秘けつや管理について、育ての親の園芸部に話を聞きました。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 花回廊のバラ園は、北バラ園、東バラ園、つるばらの森の3コーナーで構成され、全体50ヘクタールのうち300平方メートルを占める。180株というつるバラの数や、植物園ではあまり展示されない、品種改良をしていない「原種系」を数多く抱える点が特徴だ。

 たびたび花回廊を訪れている、日本ばら会公認講師の舩本典江さんは「通常の植物園は3株ほどをまとめて1株に見せることも多いが、花回廊はその必要が無いほど大きく咲く。こういった大株が毎年咲くのは、長年にわたる入念な手入れのたまものだろう」と評価する。

 

 

▼重要な作業は冬中心

 「手間暇掛けて育てているので、お褒めの言葉を聞くと喜びもひとしおです」。バラ園を統括する、同部樹木管理課主事の鳥飼健太さん(27)がはにかんだ。

 鳥飼さんは、「バラの栽培はとにかく根気が必要」と言う。中でも植え付けをする12月から、発芽し始める3月ごろまでの冬の期間、骨の折れる作業が特に多いという。

 そのうちの一つが、毎年2月ごろに行う土の肥料入れの作業だ。株本の周囲の土の数カ所に穴を空け、骨粉、菜種油、土壌改良剤を埋め込む。土とともに根の状態が良くなることで、より養分を吸収できるようになり、花が大きく育つ。

 根という目に見えない部分の話だが、咲き具合を左右する重要な作業だ。さらに、月1回の頻度で少しずつ化成肥料を加え、花に急激な負担がかからないようゆるやかに土を変化させている。

 4月初旬になり芽が出始めると「芽かき」と呼ばれる、位置が悪い芽を間引く作業がある。バラの芽は密集して出てくるため、そのまま咲かせると通気性が悪くなり、菌が繁殖しやすい。土に近い根元部分の芽を除くことで風通しが良くなるほか、芽が減った分だけ残った芽に栄養が行き渡り、まっすぐ大きく咲く。

 花回廊では芽かきの際、なるべく外側の芽を残すようにしているという。外側を大きく咲かせることで全体的にボリューム感を出し、見栄えを良くするためだ。開花までの作業一つをとっても、全国有数のバラ園としてのプライドが垣間見える。

 

▼もはや「子ども同然」

 5月になると開花が始まるが、もちろん、そこがゴールではない。バラ園はスタッフ3、4人で毎朝見回り、花に異変がないかをこまめに確認している。

 株に穴を空けるテッポウムシや、葉を食べるアブラムシがいれば取り除く。カビによって引き起こされる黒星病や灰色かび病の葉があれば、他の葉や土に伝染しないよう即座に切除、回収する。雑草が生えないよう、土の上に「バーク」というスギの樹皮をまき、日光や雨を防ぐことで繁殖を抑える。

 開花後はこういった地道な作業をひたすら繰り返す。現在開催中のバラまつりの期間など、特に人目に触れることが多い時期には、ほぼ丸一日バラ園にいることも少なくないという。

 こうして手間暇をかけて育てるバラは、鳥飼さんにとってまさに自身の子ども同然。声には出さないまでも、見回りの際は「大丈夫か」「元気に育てよ」と心の中で声掛けしている。「真心込めて大切に育てたバラを『きれい』と言われると、自分のことのようにうれしい」とはにかむ。

 

▼品種入れ替えやアーチ…さらに感動与えるバラ園を

 新型コロナウイルスで暗いニュースが続く中、今年の年間テーマは「Smile」に設定。来場者が顔を上げて前を向き、少しでも元気が出るよう、高さを生かした展示を増やした。

 ロータリーには、19本のツルバラを絡み合わせた、高さ3メートルのバラタワーを初めて設置。このほか、赤、白、黄色のツルバラが織り成す長さ約5メートルのバラトンネルなど、上を向くことで笑顔になれる仕掛けが盛りだくさんだ。バラに近づくと甘い香りもするため、目と鼻でバラを堪能できる。

 さらに、東京五輪の開催に合わせて「聖火」という品種のバラを用意した。白地だが、開花とともに全体が赤みがかり、聖火台の炎を想起させる花で、五輪開催の機運を盛り上げる。

 つるバラの印象が明るくなるような品種の入れ替えやさらなるバラのアーチの構想など、やりたいことは尽きない。鳥飼さんは「バラの品種もオブジェもどんどん増やしていきたい。これからも真心込めてバラを育て、多くの人に感動してもらえるようなバラ園にしたい」と意気込んだ。

 開催中のバラまつりは、5月30日まで。会期中無休。開園時間は午前9時~午後5時で、今月の土日は午後9時まで。島根、鳥取両県民が山陰の宿泊・観光施設を利用する際に割引を受けられる「WeLove山陰キャンペーン」の一環で、8月末までは半額の高校生以上500円、小中学生250円で入場できる。