島根ゆかりの世界的写真家、森山大道さん(84)の作品展「森山大道 光の記憶」が12日、松江市袖師町の島根県立美術館で開幕した。初日は森山さんが会場を訪れ、報道各社の取材に島根や両親との思い出、写真に臨む姿勢を語った。(報道部・広木優弥)
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ー第二次世界大戦の終戦前後を過ごした、島根県宅野村(現在の大田市仁摩町宅野)の思い出は。
僕が海や山といった「風土」に初めて触れたのが、当時の島根県邇摩郡宅野村だ。小学校2年の時、知り合いがよく、僕を海に連れて行ってくれた。それが僕が初めて海に入る体験だった。鉄道の山陰線を挟み(反対側には)山があり畑があるという大きな自然に触れた。
そういった一番はじめの記憶は、何十年にもわたるその後に全部かかってくる。外国を含め、どこかの海に行くと宅野(の海)を思い出す。僕の本当の記憶を植え付けてくれた場所で、僕の写真に関わることはすべてそこ(宅野)にルーツがある。
ー島根での本格的な展覧会は、2003年の「光の狩人」以来約20年ぶり。開催に込めた思いは。
松江を含め、世界中で展覧会を経験してきた中で思うのは、とにかく現地の方に見てもらい、感じていただきたいということ。僕の写真の理由とかはどうだっていい。僕の写真を見て、写真というものをふっと感覚してほしい。
タイトルにもなっているが、写真には「記憶」が全部ある。ご覧になる方が、それぞれの記憶をもう一度ふっと感覚する、写真はそういうもの。あまり(作品展の)意味とか意図はない。ご覧になる人が、自分の記憶をふっとよみがえらせてもらえればいいなと思っている。
ー島根県の魅力は。
「親父の生まれた古里」。展覧会をやるにしても(訪れると)やはりどこかで「親父(おやじ)、来たで」という感覚がある。風土を褒めることもできるけれど、自分の中では「親父が生まれた場所、そこから関係にこだわってきた場所」とつながっている。
ーどういった時に写真を撮りたくなるか。
基本的に、延々と...