竹島(島根県隠岐の島町、韓国名・独島(トクト))の領有権問題に、どんな影響を与えるのだろう。
岸田文雄首相が7日、韓国を訪問し、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と会談。北朝鮮の核・ミサイル対応での連携や経済安全保障面での関係強化を確認した。
太平洋戦争中、日本により強制労働させられた元徴用工への賠償問題の解決策決定を受け、尹大統領が来日したのが3月中旬。わずか2カ月弱での首相訪韓は、両国首脳が相互訪問する「シャトル外交」再開の合意を早期に実践したものだ。
シャトル外交は2011年10月の野田佳彦首相以来、12年ぶりで、岸田首相の訪韓は就任後初めて。日本の首相の訪韓自体も、18年2月に安倍晋三首相が平昌(ピョンチャン)冬季五輪開会式に出席して以来となった。最も近い隣国であり、ともに北朝鮮に対峙(たいじ)しなければならない両国としては、不適切な関係が続いてきたと言うしかない。
岸田首相は19日に始まる先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の拡大会合に尹大統領を招待。バイデン米大統領を加えた日米韓3カ国の首脳会談を開くと表明した。対日関係改善に強い意欲を示す尹大統領との間で、冷え込んできた日韓関係の修復を加速させる狙いだろう。
ただ、元徴用工問題の解決策を巡っては、韓国国内で日本側に譲歩しすぎだ、との反発の声が出ている。
現に日韓首脳会談を前にした今月2日、対日関係の改善を急ぐ尹政権を「屈辱的」と批判していた、韓国最大野党「共に民主党」の田溶冀(チョンヨンギ)国会議員が竹島に上陸。自身のフェイスブックに「独島がわが地であることを直接立証した」と投稿した。これに対し、日本政府は「到底受け入れることはできず、極めて遺憾だ」と外交ルートを通じて抗議した。
21年にも当時野党だった「国民の力」の国会議員や警察庁長官が上陸し、日本政府が抗議していた。竹島は韓国国民の反日感情をあおる「切り札」として政治家らに利用されている。
日本政府にとっては、ようやく修復に向かい始めた日韓関係において竹島問題は、喉に刺さった骨のような存在かもしれない。だからといって、関係修復を優先するあまり、これまでのように腫れ物扱いしていては何も改善しない。解決に向け、議論の俎上(そじょう)に載せるべきだ。
韓国の国内政治では、保守系と革新系の政権交代で、それまでの日韓間の合意がほごにされてきた過去がある。
日韓関係の構築には首脳のリーダーシップが必要だが、首脳間の合意だけでは不安定だと言わざるを得ない。国民の理解に支えられた日韓間の連携強化を進めたい。
竹島問題についても、国民の間で理解を深めるため、改めて日韓の主張を整理し、両国民に伝える必要があるだろう。
3月の尹大統領の訪日後、日韓関係は急速に修復に向かっている。4月には外務、防衛当局による「安全保障対話」を約5年ぶりに開催し、北朝鮮の核・ミサイル能力の高度化への対応を協議。今月2日には約7年ぶりとなる財務相会談を行い、経済・金融分野について意見交換する「財務対話」の再開で合意した。元徴用工問題をきっかけに両国が取った輸出規制の強化措置も互いに解除を決定した。
今こそ、竹島問題を含む日韓間の懸案解決へ、相互に歩み寄っていく姿勢が求められる。