相次ぐ無投票、歯止めのかからない投票率の低下…。統一地方選が示した現象は、民主主義の根幹が崩れつつあり、地方自治が揺らいでいる状況を物語る。政治や行政に携わる者だけでなく、私たちも、この危機を認識しなければならず、地方選挙制度や地方議会の改革は待ったなしだ。
4月の統一選前半戦の9道府県知事選と41道府県議選、後半戦の市長選と市議選の投票率はいずれも平均40%台で、「4割民主主義」が一段と進行した。島根県知事選は54・96%、鳥取県知事選が48・85%だった。
それと並び深刻なのは、有権者の貴重な選択の機会を奪う無投票だ。後半戦の県庁所在地を含む88市長選の28%、125町村長選の56%が選挙の洗礼を受けずに当選。道府県議選では全体の4割近い348選挙区、373町村議選は約3割の123町村で告示日に顔ぶれが決まった。候補者が定数を下回る議会は、4年前の8町村から21市町村に増加、地方議員のなり手不足は、より鮮明になった。
こうした「政治離れ」を反転させるには、制度の見直し、議会を身近に感じてもらう議会や自治体の発信力の強化、そして政党の候補者発掘努力という三つのアプローチの改革が欠かせない。道府県議選では、〝指定席〟化が目立つ1人区や2人区を合区して、立候補しやすくする。若い世代の挑戦を後押しするために、被選挙権年齢や供託金の見直しも俎上(そじょう)に載せるべきだろう。候補者の訴えを浸透させるには、運動期間(市区議選7日、町村議選5日)の延長も考えたい。
また、定数の削減による議員報酬の引き上げや、仕事を辞めなくていいような休暇制度、副業・兼業の導入・拡大を進める環境整備も検討課題だ。全国的な関心を高めるには、「統一率」が27%にまで落ち込んだ地方選の再統一の論議も必要ではないか。
議会選挙の低迷は、地方議会の役割が住民に十分に理解されていないことも大きい。行政の追認ではなく、チェック機能を果たし、時には首長の背中を押す政策を提起するなど、存在感の発揮が求められている。
夜間・休日議会の開催(長野県喬木村など)、議会傍聴者に発言機会を与える模擬公聴会の設定(長崎県小値賀町)、議会モニター制度、議員と住民のコミュニケーションの場など、独自の試みを横に広げてみたい。
今回の統一選で明るい兆しと言えるのは、道府県議選や市議選で女性の当選者が過去最高になった点だ。全体に占める比率はそれぞれ14%、22%と人口の男女比にはほど遠いが、「高齢・男性」が中心の地方議会改革の一歩にしてほしい。香川県まんのう町などが開いている女性模擬議会の動きも参考になる。
一方で、地方の議会と対照的に、立候補が70、80人にも上る東京の区議選では、有権者が1人を選ぶのは容易ではない。選挙区を分割して候補者を分かりやすくするなど、改善の余地がある。
人口減少と少子高齢化の加速で「縮む社会」が避けられない以上、安全・安心で幸福を実感できる地域づくりへ、住民も知恵を絞らなければならない。限られた財源で何を優先させるのか。横並び意識から脱し、個性や構想力を競い合う時代を迎えている。地域の未来や私たちの暮らしを左右する選択に背を向けるわけにはいかない。