コロナ禍で昨年中止となった島根県高校総合体育大会が27日、開幕する。今年の選手の多くは、練習の成果を発揮することができなかった昨年の3年生の思いを受け、本番に臨む。団体で大会7連覇を目指す松江工業高校男子ソフトテニス部もその一つ。舞台に上がれることに感謝し、暗くなるまで球を追う。 (小引久実)
昨年7月、ソフトテニスは県総体の代替大会があったが、団体戦は雨で中止に。県総体連覇どころか代替試合さえできなかった。
会場に到着した車の中で中止の一報が伝わり、当時2年生だった大庭優太主将(17)は「車の中が急にどんよりした空気になった」ことを覚えている。
思わぬ形で引退となった先輩たちの「来年は優勝しろよ」という言葉だけが支えとなった。「先輩たちは自分たち以上に悔しかったはず」と話す。
新チームも公式戦や遠征も中止になるなど苦しい時期が続いた。気持ちが折れそうになるたびに、次の試合に向けて部員同士が声を掛け合ってきた。何より原動力になったのが、巡り合わせの悪さにも腐らず励ましの言葉を掛けてくれた先輩の思いに報いる、という気持ちだ。
今年1月の全国高校選抜中国予選では、マッチポイントをしのぎながらの勝利もあり、2位で通過。全国切符も手にした。
「団体戦は個人戦と違いチームで勝ち取るもの」と大庭主将。選手は毎年ユニホームを新調するのが普通だが、同校の団体戦用だけは、長年先輩から受け継いだ同じ物を着用する。6月4、5の両日の試合に臨む選手たちに、顧問の野津洋吉教諭(47)は「今年勝つことで、(戦うことができずに)引退した先輩たちも勝ったことになる」と奮起を期待する。