5月3日は憲法記念日で、今年もその日を中心にマスコミは憲法のことを盛んに取り上げていた。そのことで気になることがある。それは、憲法の取り上げ方に偏りがあることである。とりわけ憲法改正の是非に話題が集中する。焦点はもっぱら第9条で、国の安全保障政策と併せて論じられる。それ以外に、いわゆる緊急事態条項なども改正の論点として登場している。

 もとより憲法を改正するかどうかはとても重要だから、広く国民の間で議論されてしかるべきだ。ただ、論点は決して改正の是非にとどまらない。以前にも書いたことがあるが、憲法とは国の権力に箍(たが)をはめる重要な装置である。

 ここで権力とは、国会や政府のことをいう。例えば、立法機関である国会は、国民の権利を制限し、義務を課す法律を制定することができる。しかし、だからといって、どんな内容の法律でも自由自在に制定できるわけではない。もし、憲法が...