かつて中上健次は、物語がはらみもつ定型を自覚しその差別性を批判的に検討した。つねに受け手を必要とする物語は、面白くあるために標準からの隔たりを利用する。過大や過小、肯定や否定、すなわち「普通(ノーマル)」という基準を設け、そこから逸脱するものに徴(しるし)をつけ、ストーリーの面白さに供し、受け手の情動をかき立てるべく「活用」する。

 こうした物語が...