コロナ禍で閑散としていた繁華街は5類移行後、活気が着実に戻りつつある。一方、消費スタイルの変化で、コロナ前のにぎわいを取り戻すのは時間がかかるとの見方もある。
「暇に慣れていた分、あたふたする」。6日午後8時半、松江市の繁華街・伊勢宮町でスナック「メイプル」を営む赤池忍代表が仕事終わりの団体客を慌ただしく接客しながら、うれしい悲鳴を上げた。
感染拡大した2020年以降の3年間は、来店客がゼロの日も少なくなかった。5類移行後は平日のビジネス客の利用が急増し、全40席が埋まる日も。5月は企業・団体の総会シーズンという追い風もあり、過去最高の来店客数となった。
各地で客足は回復しつつある一方、長期のコロナ禍で変わった消費スタイルの影響は簡単には消えない。
出雲市の繁華街・代官町では、週末を中心に若者の出入りが活発になったが、中高年層をターゲットにした店の来店は鈍い。飲食業者64店でつくる出雲ナイトビジネス協議会の高木隆慈会長は「家飲みに慣れた中高年の動きがまだまだ少ない。自粛期間は3年に及び、元に戻るのは数年かかるのではないか」と不安視した。
酒類卸の山陰日酒販(松江市矢田町)の飲食店向け出荷数量はコロナ禍前の7~8割。営業部の池田慎一郎次長は「大勢が集まる宴会が減り、需要が高まらない」と説明した。
酔客が回復に向かい、タクシーは夜間利用が伸びるものの、慢性的な人手不足が悩みの種。益田タクシー(益田市赤城町)では運転手が足りず、客を20~30分待たせることがあるという。藤原政志常務によると、同業他社も状況は似通っており「ご迷惑をお掛けして申し訳ない。地域に貢献できるよう全力を尽くす」と話した。(取材班)