腸内環境を整える「腸活」という言葉がよく聞かれる。ドラッグストアには、関連商品が所狭しと並び、大ヒットの乳酸菌飲料ヤクルト1000も睡眠の質改善とともに、腸内環境を整える効果をうたう。人の腸には1000種類100兆個の腸内細菌があり、健康の維持にはこのバランスが大きく関わっているという。腸内細菌に詳しい島根大医学部内科学講座(内科学第2)の石原俊治教授(62)の講演を取材した。(Sデジ編集部・鹿島波子)

小腸と大腸の役割
講演は5月、松江市内で「腸内細菌と健康の話」と題して松江観光協会が主催して行われた。観光プロデューサーを務める元週刊文春副編集長・羽田昭彦さん(65)がトークライブ「くるま座」で初の健康講座として開催した。
石原教授はまず、脳、脊椎、心臓がない動物はいても「腸がない動物はいない」と腸の重要性を説き、腸の仕組みを一から分かりやすく説明した。
腸には小腸と大腸がある。小腸は、消化酵素によって、糖質やたんぱく質、脂質を分解し、栄養素を吸収する役割を持ち、体の水分の80~90%(6~8ℓ)を吸収する。栄養の吸収とともに、小腸が重要なのは、体内の免疫細胞の6~7割を持つ「最大の免疫臓器」であることだ。「あらゆる病気への影響を小腸が担っていると言っても過言ではない」と石原教授は強調した。
大腸は、体の水分の10~20%(1~2ℓ)を保有し、主な役割は便の生成だ。便がたまると神経を通じて脳に伝わり、トイレに行きたくなる。この仕組みを「排便反射」といい、脳とのつながりを強く示している。
「腸活」は、腸内細菌のバランスを保つこと
そしてこの二つの腸には、100兆個の腸内細菌が活動している。石原教授は「腸活とは腸内細菌のバランスを保つこと」と説いた。では、腸内細菌とはどのようなものなのか。
腸内細菌を大別すると、善玉菌、日和見菌(ひよりみきん)、悪玉菌があり、2:7:1の割合で存在している。善玉菌は、乳酸菌やビフィズス菌、悪玉菌はブドウ球菌や大腸菌などで、日和見菌は腸内の状態によって優勢な方に味方をする菌だ。

悪玉菌は根っからの「悪」ではなく、バランスを保っていれば、たんぱく質を分解したり感染予防を手伝ったりと、いい働きもする。しかし腸内が乱れて、悪玉菌が増えると、...