小泉八雲の紀行文「夏の日の夢」を基にした映像作品を制作した吉田真也さん=松江市南田町
小泉八雲の紀行文「夏の日の夢」を基にした映像作品を制作した吉田真也さん=松江市南田町

 青森県出身で昨年から松江市を拠点に活動する映像作家の吉田真也さん(27)=松江市南田町=が、文豪・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)を主題にした映像作品を制作した。八雲が熊本居住時に書いた紀行文「夏の日の夢」に基づいており、同作や八雲ゆかりの土地の描写を通じ、みずみずしいまなざしで八雲の人物像に迫る。(佐貫公哉)

 吉田さんは2015年から、歴史的な出来事や個人の記憶をテーマにした映像作品を制作している。今年3月には東京芸大大学院を修了した。

 映像作品は「ラフカディオ・ハーン -海界(うなさか)の風景-」と題した約20分の短編作品。「夏の日の夢」に関わる九州の海や建物のほか宍道湖など、八雲が見たであろう風景をたどる。映像には紀行文の引用や、八雲の生涯に関する英語のナレーションが寄り添う。

 「夏の日の夢」は八雲が1891年秋に松江を去った後、英語教師として3年間を送った熊本時代に発表し、長崎旅行の帰途や浦島太郎の物語が語られる。幼少期の記憶をつづったくだりもあり、吉田さんは「八雲の秘密に近づけるのではないか」と考えたという。

 作品は今春の東京芸大大学院の修了作品として提出し、3月末~5月5日に国際交流基金が主催したオンライン現代美術展に出展された。

 吉田さんは大学院在学中の昨年、日本の昔話の構造を扱った民俗学の文献を読み、たびたび参照される小泉八雲に関心を持つようになった。

 6月に2泊3日で八雲のことを調べに松江を訪れ、宍道湖の存在感や街に漂う気品に好印象を受けた。7月には松江へ移り住み、8月頃から11月までに松江や九州で断続的に撮影し、今年3月に作品が完成した。

 吉田さんは「半年かけて映像を作ったが、八雲をテーマにできることはまだ多くある」と話す。八雲を顧みることに現代的な意義も感じ「異文化を積極的に受け入れる他者理解の姿勢が魅力的。国と国との対立を和らげる力があるのではないか」と考える。

 小泉八雲記念館(松江市奥谷町)は13日、八雲が現代の若者を魅了する理由を探るイベントを開く。吉田さんと、松江のスポットや怪談をオリジナルキャラクターと声優の語りで発信する島根県立大2年の鈴木彩女さんが登壇し、活動報告をする。イベントは後日、オンライン配信される。