多国籍なメンバーで担ぐおんなみこし
多国籍なメンバーで担ぐおんなみこし

 松江市天神町の白潟天満宮で「天神さん夏祭り」の名物「みこし渡御」が24日夜あり、4年ぶりに行われた「おんなみこし」の一員として参加した。松江在住歴5年の新人記者が、初めてみこしを担いだ。松江城から白潟天満宮までの約2キロ。猛暑の中で大声を張り上げ、仲間と歩を進め、濃密な時間を過ごした。当日の様子を振り返る。(Sデジ編集部・林李奈)

 

 みこし渡御には約400人の男女が参加した。女性が対象のおんなみこしは、10~50代の約40人が担いだ。松江天神御輿(みこし)連の睦会が取り仕切り、飯塚聖子会長(42)は「4年ぶりのおんなみこし。今までは口コミで募集を募っていたが初めてネットで募集をかけた」と話した。その効果があり、参加者のうちの14人は島根に在住する中国人や英国人などの外国人。雲南市からも参加者があった。松江市の国際交流員で初めて参加した郭 晨然(カク・シンゼン)さんは「一度みこしを担いでみたかった、4年ぶりにチャンスがやってきた」と話し、ねじり鉢巻きを強く巻いた。

控室でねじり鉢巻きを巻く参加者

 当日は午後2時から準備が始まった。記者も気合を入れるため、睦会(むつみかい)のスタッフに手伝ってもらいながら水に濡らしたさらしを巻き、背中に竜の絵柄が入った紫の法被をはおった。いつもは付けないカラーコンタクトを装着し、長いアイラインを引き、髪をまとめ、頭にねじり鉢巻きを締め、地下足袋を履く。いつもと違う装いやメークに浮き足立ち、初対面の担ぎ手の仲間たちとスマートフォンで自撮り写真を撮った。今年から担ぎ手には、白潟天満宮で祈祷を受けた「天神祭」の木札が配られ、担ぎ手はおそろいで首にお守り札をかけ、心を一つにした。

法被をはおり、首から「天神祭」の木札をかけ、右手で持つ記者=松江市灘町

 午後6時、出発地点の松江城につくと、お茶や発泡酒、おにぎりがふるまわれ、少し得をした気分に。本番前に酒を飲んでいる人もいた。まだ景色は明るく、出発時間を待っておにぎりを食べていると、声を掛けられた。「TV局です、取材いいですか?」いつもは取材する側だけに取材されるのは久しぶりだった。「同業者」とも言い出せずに2局の取材を受けてしまった。

 午後7時に松江城を出発。みこしを担いで、白潟天満宮を目指す約2キロの道のりを歩く。気温はまだ34度、少し歩くだけで汗が背中を伝った。松江大橋を渡ると道沿いには屋台がずらり。焼いたイカのいい匂いがした。「食べたい」がここはみこしに「全集中」だ。

 白潟本町でみこしの上に乗せてもらった。天神さん夏祭りで担がれる最も大きい本みこしには、神様がみこしの上に乗っているため、みこしの上に乗ることはできない。おんなみこしには神様が乗っていないとされ、上に乗ることができるという。

 みこしの持ち手に足をかけて登った。目線が3メートルほどになり、高い場所から祭りを見下ろした。揺れるみこしの上から声で「サー!」とあおると、みこしの鈴が鳴り担ぎ手の声がさらに響いた。なんとも気分がいい。みこしはスマホやカメラを持った人に囲まれ、フラッシュも当たった。4年ぶりの祭りの活気に、更にボルテージが上がっていく。貴重な体験に高揚し「ソイヤー」人生で一番声を上げた。こうなれば、暑さも発奮材料だ。

みこしの上に乗り叫ぶ記者(右)

 みこしが天神町商店街を通ると、鏡開きがあった。お神酒として松江市の銘酒「豊の秋」が振る舞われた。疲れた身体にアルコールが巡る。「うまい、うますぎる」。天神太鼓の音が響き、少し酔っぱらった人たちが祭りをさらに盛り上げる。

屋台の間を練り歩くおんなみこし

 おんなみこしが最終地点の天神ロータリーに到着した。ロータリーの前では多くの人たちでにぎわい、こちらを注目していた。みこしを置いた後、観客にお餅を撒いた。餅まきも初めての体験だったが、小さな子どもが手を広げているのが見える。目が合って、その子めがけて餅を投げた。次は遠くに投げようと思ったら手が滑って自分の真上に餅を投げて、危うく自分にあたりかけた。自分も餅がほしかったが、いつの間にか手の中には餅は無くなっていた。

みこしを担ぎ終えた後、餅をまいた

 終了後には直会があった。歩き疲れた体に発砲酒とオードブル料理が進む。みこしを担いだ仲間とともに「また来年も担ごう」と言い合いながらもらったお守りをにぎりしめた。祭りから一夜明けると、心地よい疲労感と両肩には「勲章」のようなあざが残っていた。

みこし渡御の後の白潟天満宮