国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」(熊本県合志市)入所者自治会の太田明副会長(79)が31日、益田市須子町の市人権センターで講演した。患者の人権を侵す国の強制隔離政策や、法改正を目指す患者の闘争の歴史を振り返り、「ハンセン病問題を『自分ごと』として受け止めてほしい」と語った。
太田さんは8歳で発症し、菊池恵楓園に入所。大学進学に伴い退所し、卒業後は就職もした。再発のため再び入所した1971年以降、自治会の一員として、療養所を設けて患者の強制隔離を制度化した国に対し、法改正を求める全国の患者団体の活動に参加するようになった。
国への陳情や国会前などでの座り込みを入所者が療養所を飛び出してまで参加する激しい闘いだったと振り返り、「らい予防法」が3度目の法改正運動を経て96年に廃止され、89年にわたる隔離政策に終止符が打たれたと説明した。
全国の療養所入所者は平均年齢87・9歳で高齢化が進む中、国に対し啓発事業の推進などの要望を続けているとし「間違った政策が二度とないように一人一人の人権を守るとの思いで活動を続ける」と語った。
人権問題などの啓発活動を展開する「市民活動養成塾」が主催し、市内の小中学校の教員ら約160人が聴いた。中西小学校教諭の金津翼さん(30)は「当事者の話を詳しく聴く機会は初めて。子どもたちにも伝えたい」と話した。
(藤本ちあき)