公演前、会場を見回る掘留三男さん=松江市学園南1丁目、旧島根県立プール跡地特設大テント
公演前、会場を見回る掘留三男さん=松江市学園南1丁目、旧島根県立プール跡地特設大テント

 案内役のリングマスターがスティックを高くかざした瞬間、明るくなったステージ上に多彩なパフォーマーの姿が-。オープニングの一場面だ。観客席が盛り上がる中、舞台上に鋭い視線を送り続ける男性がいる。演出部長の堀留三男さん(66)だ。

 サーカス設立時からのメンバーで元はパフォーマー。当時から演出に携わり、12年前に演出部長に就任し、ステージの総監督も務める。時間や照明のずれがあれば、パフォーマーのほか、音響や照明の担当者に無線で指示を送り、円滑な進行に努める。トラブルの対応も重要な仕事だ。

 サーカスには長く携わっているが、新型コロナウイルス禍を経た今回の舞台は「3年間の休止を乗り越えた思いをぶつける」と特別な決意がある。新たにバイオリン奏者を入れ、音響を強化。世界各国から集まったパフォーマーによるテンポ良く多彩な演技が、音楽の力でより優雅に映るようになった。

 現状には満足せず、ステージのクオリティーを上げることに妥協はない。公演中にも外部からダンス講師を呼び特訓。新しい演出や表現を思いつけば、公演のさなかでも、団員たちに教え込む。復活を遂げたサーカスをもっと進化させようと腕を振るう。

 「練習からパッション(情熱)を100%出してください」が口癖。一流パフォーマーと毎日、本気で向き合う。堀留さんとパフォーマーの情熱が、熱い舞台を作り上げている。 (林李奈)