JR木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」(定員64人)について、JR西日本が3日、2023年度を最後に運行を終了すると発表した。客車が老朽化し、車両維持が困難なことが理由。同社は低収益のローカル線を再編する可能性に言及しているが、運行終了と、木次線そのものの存廃判断とは関連しないと説明した。(田淵浩平)

 同社によると、おろち号は製造後40年以上が経過し、車両の老朽化と部品調達に苦慮。客車2両のうち、窓枠のないトロッコ車が23年度に6年に一度の車検を迎え、更新しないことを決めた。新造や中古車両による代替は検討していないとした。

 同社の21年3月期連結決算は新型コロナ禍で旅客が大幅に減少し、2332億円の最終赤字を計上。

 今年2月には長谷川一明社長が具体的な路線の明言を避けたものの、低収益のローカル線について廃止を含め、在り方を見直すと表明した。

 3日に松江、米子両市内で記者会見した牧原弘執行役員米子支社長は、運行終了は業績悪化が背景ではなく「あくまでも車両の老朽化によるもの」と説明。路線の存廃判断とは「関係ない」と話した。

 運行終了に伴い、山陰線の観光列車「あめつち」などを木次線に投入して代替する計画はなく、木次線の利用促進については引き続き島根県や沿線自治体と取り組む考えを示した。

 おろち号は1998年に運行開始。木次駅(雲南市木次町里方)|備後落合駅(広島県庄原市)の60・8キロを春から秋にかけて走り、一部は出雲市駅(出雲市駅北町)からも運行する。

 新型コロナ感染拡大前の2019年度は約1万3千人が利用。木次線全体の乗客数に占める割合は7~8%だった。

 木次線の19年度の平均通過人員(1日1キロ当たりの利用者数)は190人で、旅客運輸収入は管内51路線で3番目に少なかった。