損害保険ジャパンと中古車販売大手ビッグモーターの看板
損害保険ジャパンと中古車販売大手ビッグモーターの看板

 中古車販売大手ビッグモーターを巡る「闇」が、拡大の一途をたどっている。

 事故車両の修理に絡む自動車保険の不正請求に端を発し、被害者であるはずの損害保険会社側との抜き差しならない親密な関係が明るみに出た。損保側は不正に目をつぶっていたのではないか。そんな疑念が指摘され「不正の温床」との声も上がる。ビッグモーターが法で義務付けられた内部通報体制の整備を怠っていた疑いも強い。

 車両修理の実態や費用水増しなどについては国土交通省、損保側も含む自動車保険関連は金融庁、内部通報制度の不備などは消費者庁が、各所管法令に基づいて報告を要求するなど既に調査を本格化させている。

 実態解明を急ぎ、結果を速やかに公表すべきだ。徹底したメスを入れてうみを出し切り、必要なら制度改革にも踏み込んでもらいたい。

 ビッグモーターのもともとの不正は、過大なノルマ主義の結果、事故車両の修理に際して車体をわざと傷つけたり、不必要な部品交換をしたりして、保険金の水増し請求が全国の工場で横行していたというものだった。

 疑念は損保業界にも波及。損保各社は事故に遭った保険契約者に車両修理先としてビッグモーターを紹介し、同社は紹介台数に応じて、中古車販売時などの自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)契約を各社に割り振っていたことが分かった。

 ビッグモーターが扱う契約の年間保険料は約200億円に上るとされる。損保各社は保険契約欲しさで競うように修理紹介をし、不正請求を助長したことは否めない。

 ビッグモーターには各損保からの出向者もいた。累計人数は損害保険ジャパンが37人と突出して多く、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険が各3人。損保ジャパンはビッグモーターが扱う年間保険料の約6割を得ていたとされる。

 その損保ジャパンは、昨年1月ビッグモーターの工場従業員が不正を内部告発した際「工場長の指示」とした証言が、損保各社への報告書では「指示はなかった」と改ざんされたことを出向者を通じて把握していた。

 ところが報告書を受け入れ、内部告発を受けて各社がそろって停止していた事故車両修理のあっせんを1社だけ早期に再開。金融庁には「指示は確認できなかった」と説明していた。同庁が損保ジャパンを重点的に調査する方針なのも当然だ。

 ビッグモーター店舗周辺の街路樹が枯れるなどの問題も相次いだ。同社は清掃活動で使った除草剤などが原因の可能性が高いと認め、謝罪した。

 数年前から上層部が環境美化を現場に強く迫り、ペナルティーとして恣意(しい)的な降格処分を乱発していたことが背景にある。同社は損害賠償や原状回復に誠実に対応しなければならない。

 驚くべき企業不祥事は、他にも相次いでいる。

 国家的緊急事態だった新型コロナウイルス対策関連でも、受託業務費の自治体への過大請求が複数の企業で発覚。詐欺事件として幹部社員らが刑事責任を問われた近畿日本ツーリストは、過大請求が最大9億円に上るとする点検結果と社長が辞任することを発表した。

 あらゆる企業は自らの社会的責任を肝に銘じなければならない。さもなければ、高い代償を支払うことになる。