本番に向け練習する出演者=益田市有明町、島根県芸術文化センター・グラントワ
本番に向け練習する出演者=益田市有明町、島根県芸術文化センター・グラントワ

 益田市ゆかりの万葉歌人・柿本人麻呂(人麿)が今年、没後1300年とされるのを機に26、27の両日、益田市有明町の島根県芸術文化センター・グラントワで、記念イベントがある。朗読劇や音楽ステージを通じ「歌聖」とうたわれた人麻呂の功績をたたえる。

 地元を中心に出演者やスタッフを構成し、27日に朗読劇を初披露する。人麻呂は優れた宮廷歌人として時の天皇に重用されたが突如として宮廷を去り、史料にはほとんど記録が残っていない。謎は多いが、歌や伝承を手がかりに脚本を制作し、劇で人麻呂像を浮かび上がらせる。

 益田市には人麻呂の生誕、終焉(しゅうえん)の伝承が残る。持統天皇に重用され、天皇・皇族の賛歌や挽歌(ばんか)を数多く詠んだが、権力争いに巻き込まれ宮廷を去り旅に出たとされる。石見の地も訪れ、現地妻・依羅娘子(よさみのおとめ)と愛を育み、後に別れを惜しむ「石見相聞歌」を詠んだ。

 脚本は、推進委員会や市柿本人麿公顕彰会のメンバーでもある永田賢治さん(71)が制作。高校時代は演劇部で、教員として演劇部顧問も務め演劇に関わってきた。

 顕彰会メンバーとなって以降は人麻呂を身近に感じらてもらえるよう、形あるものを残したいとの思いがあったという。記録は少ないが脚本では、歌や伝承、文献を基に解釈し書き上げた。理知的で正義感があり愛情が深い人物像を描く。

 最終盤を迎えた稽古で出演者は発声や、せりふを言うタイミングなどを念入りに確認。詩吟や弾き語りなどさまざまな音、音楽に乗せ人麻呂が生きた1300年前の情景をつくる。

 人麻呂役の伊藤修二さん(56)=益田市高津6丁目=は「歌を詠む時は、日本の楽曲の原点であるかのように表現している。ミステリアスだが、さまざまな人々と関わった人麿の人柄が伝わればうれしい」と練習に励む。

 本番は27日午前10時半からグラントワ大ホールである。無料。(藤本ちあき)